5: ◆uCwA0MUuYI[sage]
2012/12/11(火) 13:25:45.53 ID:gRXqkQQAO
―――
今日は金曜なので学校は早くに上がることにした
時は金なり。早く家に帰って取り溜めた番組を観なくては。
流れるように下駄箱へ直行。
今になって思うが
人はあわてているときに限って大事な物を忘れたり無くしたりしてしまうという。
あのときの私も彼女に出会わずに帰宅しようものなら、家には入れなかっただろう。
尤も、あのときの私はもっともっと、多くのものを忘れていたのだ。
下駄箱の鍵を開けて、靴を放る様に履いて、駆け出した。
駅では今か今かと電車を待った。
片手にはその番組のグッズ本。
お気に入りの登場人物の記述をなめ回さんとばかりにしていた。
五郷。開いた電車のドアから一目散に飛び出し階段を五段飛ばしで駆け上った。
どうやら私は足を四回ほど動かすだけで大人になれたようだ。
あのとき彼女を見た曲がり角を全速力で駆け抜ける。
と、その時。
「あっ、あのっ」
女の子の声だ。なんなんだ、全く。こっちは急いでるというのに!
ややうんざりして、疲れた風に体を裏返して、文句の言葉を―――
―――吐きかけようとして、口が止まった
否、時が止まった。
彼女が目の前にいたのだ。
「さっき、階段でこれを落としましたよ」
!
これは…!
つぎはぎのウサギの小さなぬいぐるみがぶら下がった、鍵。
私の家の鍵だ。
顔から火が出るとはこのことか。
私は彼女に平謝りして、すぐにその場を立ち去ってしまった。
そして走り出してすぐに、お礼を言ってないことに気づいた。
だけども、止まれなかった。
周りは加速した。息が苦しい。何かに締め付けられているようだ。
引き返せばあの子とも話ができたというのに…!
家につく頃にはそんなどんよりと曇った後悔を抱えて、汗とも涙ともつかぬ液体をまとい
ただただうなだれるだけだった。
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