過去ログ - 堕女神「私を、『淫魔』にしてください」
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11: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2012/12/18(火) 02:40:57.18 ID:w6oP1aHdo
先ほど勇者が曲がった角から現れた、声の主。
勇者は、その声に、……声だけに反応して、名前を言い当てた。
そう―――振り向きも、せずに。

サキュバスA「…あなたは……なぜ、こんな所で……。それに、何故私の名を?」
以下略



12: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2012/12/18(火) 02:41:31.96 ID:w6oP1aHdo
だめ押しの一言で、疑いを更に晴らすように仕向けてまっすぐに彼女を見る。
紫水晶のような瞳も、角も、何もかも、覚えているままの彼女の姿だ。
強いて挙げるなら、髪が『七日間』に比べてやや短いだろうか。
魅了するような眼差しも、若干抑え目となっているのもある。

以下略



13: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2012/12/18(火) 02:42:08.15 ID:w6oP1aHdo
サキュバスA「?」

勇者「いや、なんでもない。……顔と名は知ってたんだ。そこの額縁に映って見えたんだよ」

サキュバスA「……そう、でしたか」
以下略



14: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2012/12/18(火) 02:42:40.75 ID:w6oP1aHdo
その場を後にして、長い廊下を、一人歩く。
誰ともすれ違う事なく、時が止まったかのような、大きな窓から昼下がりの光の差し込む廊下を、ただ歩く。
ぽかぽかと暖かい陽気は、今の勇者には、素通りしてしまうように思えた。

全てを承知で、この世界へと渡った。
以下略



15: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2012/12/18(火) 02:43:19.85 ID:w6oP1aHdo
夕食の準備が整い、大食堂へと赴く。
どこか馴染みのある香りに包まれたその食卓には、鏡のように磨かれた銀食器が並んでいる。

メイドの一人が椅子を引き、勇者を座らせる。
艶やかなクロスが敷かれた、一人には持て余すほどの大きな食卓。
以下略



16: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2012/12/18(火) 02:44:44.91 ID:w6oP1aHdo
勇者「……?」

確かに、美味だ。
待ち望んだ瞬間であったはずなのに。
なのに。
以下略



17: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2012/12/18(火) 02:46:02.61 ID:w6oP1aHdo
堕女神「……お口に合いましたでしょうか?」

勇者「……ああ。美味かったよ」

堕女神「恐れ入ります。……陛下、お伺いしたい事がございます」
以下略



18: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2012/12/18(火) 02:46:59.78 ID:w6oP1aHdo
その後、一時の休みを経て、書庫へ入った勇者は圧倒された。

何という事のない扉をくぐれば、そこは、冗談のように大きな書架の迷宮だった。

いや、大きいという程度のものではない。
以下略



19: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2012/12/18(火) 02:47:32.12 ID:w6oP1aHdo
すぐに、勇者は踵を返して、口元を押さえながら廊下へ出た。

勇者「……うっ……!」

胸中が激しく痙攣し、ぎゅっと窄まった胃袋が、食べたばかりの夕食を押し戻してくるような感覚を覚えた。
以下略



20: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2012/12/18(火) 02:47:58.21 ID:w6oP1aHdo
そこで、真っ直ぐに彼女の目を見る。
秘められた魅了の魔力は抑えられ、彼女もまた、真っ直ぐに勇者を見ていた。
まるで――変哲のない『人類』を見るような目で。

勇者「…そうか、そうなんだな」
以下略



21: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2012/12/18(火) 02:48:24.31 ID:w6oP1aHdo
寝室へ入ると、ひと心地ついたような気持ちだった。

―――考えてみれば、今日は、何もかもが。

『勇者』は『魔王』を打ち倒した。
以下略



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