21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/12/25(火) 01:34:36.61 ID:ciVG5wjy0
「アイドルもサンタも同じだ。悩んで自ら夢をすり減らしているうちは、人に夢を配る仕事なんてできっこない」
「……!」
「だから、こうして私に出来る形で、君が進める道を照らして示させてもらった。しがない一アイドルからのクリスマスプレゼントだ」
言いたいことを全て吐き出し、私は出口に向かった。イヴの表情が何を表しているのかはわからないが、もう私に出来ることはない。
大扉の取っ手をぐいとつかみ、イヴに向かって大きく開け放つ。
「さぁ、あとはどこへでも行け。もうここも閉める」
イヴは立ち尽くしたまま動かない――だが、その表情がだんだんと笑顔に変わっていく。
雨滴のようにぽつんと発した喜びは、瞬く間に怒濤の驟雨のように膨れ上がり、私に押し寄せてきた。
「ありがとうございます!私に足りない何かを、いま木場さんから貰った気がします〜!すごいです〜!」
「……それはよかった。必要なものが足りたなら、あとは取りかかるだけだ。さぁ、行ってこい」
ぴょんぴょんと跳ねて抱きついてくるイヴに心温まるものを感じつつも、私がここでサンタを独占しては仕方がない。
なかなか離れない彼女を送り出すのが、私の本日最後の仕事だ。
「木場さん!すごい、木場さんは私のサンタさんです〜!」
「な、なんだって?」
「木場サンタです〜!」
「き、君もその名前で呼ぶのか。柄でもないし、やめてくれないかな……」
「それじゃあ真奈美サンタです〜!」
「そうじゃない。そうじゃないんだよ……」
……いやしかし、最後の仕事を終えるにも、まだ少しかかりそうだ。
私は苦笑いしながらも、抱きついてくるイヴの温もりを心地よく感じているのだった。
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