27:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/12/25(火) 01:50:02.45 ID:ciVG5wjy0
イヴから渡されたサンタ服を着込むと、極寒の冬空にも何のことはなく耐えられた。
普段より近い雲と舞い散る雪、眼下に広がる光あふれる街と、思わず息を呑むような絶景がみるみるうちに流れていく。
普通に生きていては味わえない感覚にしばし感動を覚える……
が、今は少々イヴと話したいこともあったので、私は意識を現実に引き戻し、前方の座席に座るイヴに声をかけた。
28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/12/25(火) 01:51:50.93 ID:ciVG5wjy0
「私も一応は自分の意志で付いて来たからな。とやかく言うつもりはないんだが」
「う〜ん。木場さん、夢を届けるって言ってたじゃないですか〜」
速度が収まったので、荷台を移動してイヴの横へと座る。
典型的なサンタのイメージである、恰幅の良い男性のサンタ用に作られているのか、私たちは二人並んでちょうどよく収まった。
29:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/12/25(火) 01:54:09.65 ID:ciVG5wjy0
輿水。表札にはそう刻まれていた。
「幸子か…… 確かに苦労人な感はあるし、割と良いチョイスだとは思うが……サンタを信じているような年か?」
「どうでしょう〜。まぁ、まずは幸子ちゃんの寝室を探しましょう〜」
「……ところで、仮に彼女へのプレゼントが決まったとして、どうやって置くんだ?」
30:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/12/25(火) 01:58:26.88 ID:ciVG5wjy0
イヴが音もなく窓を開け、注意深くカーテンをずらす。私はいざというとき見つからないよう、脇に隠れている。
「……ビンゴです〜。手紙と大きめのサンタ用靴下を確認しました〜」
「おいおい……」
31:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/12/25(火) 02:04:58.97 ID:ciVG5wjy0
開いて、閉じる。その間に、じっくり読むという行為は存在していなかった。
もういちど開く。じっくり読む。頭を抱える。
あちゃー。イヴは表情でそう伝えてきた。
「これはのっけから核爆発なみの地雷ですね〜。夢の伝導師木場サンタさん、どうしましょう〜」
32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/12/25(火) 02:07:08.36 ID:ciVG5wjy0
--------------------------------------------------
……さて、こんな風に一生懸命、自信を持ちきれない自分を取り繕いながら、なんとかアイドルとして頑張っています。
やっぱり、どこか無理しているのは自分でも分かってますし、それが結果としてキャラに結びついて売れているというのもあると思います。
33:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/12/25(火) 02:14:44.66 ID:ciVG5wjy0
「……なぁ、イヴ」
「は、はいっ!」
「私はなんてことをしてしまったんだろうな。こんな、何が出来るわけでもないのに、人の心の傷を覗き見て……」
「はわわ!木場さんのせいじゃないです〜!落ち着いてくださいぃ〜!」
34:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/12/25(火) 02:17:52.21 ID:ciVG5wjy0
「なんですかこんな夜中に…… サンタさんってことは、まさか…… まさかないでしょうけど……」
私たちのちょうど真下、幸子が窓から顔を出した
(声、出しすぎちゃいましたね〜。かなり警戒されました〜)
35:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/12/25(火) 02:19:33.99 ID:ciVG5wjy0
いや、まだだ。幸子の呟きを聞いた私の頭に、閃きが降りてくる。
幸子は心のどこかで、サンタを望んでいる。ならば、この状況を逆に利用できるはずだ。
プレゼントが荷台から離れる。イヴも音でようやく気づいたが、ふつうに対応するにはもう遅い。
私は、幸子に聞こえないよう小声で、しかしはっきりと言葉を届けるため、ほとんど無意識のうちに口を動かしていた。
36:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/12/25(火) 02:23:00.79 ID:ciVG5wjy0
空中に弧を描くように。大地を踏みしめるように力強く。しかし軌跡は乱れもなく美しく。
ブリッツェンはこのうえなくダイナミックにかっこよく、ソリを牽いてみせた。
ちょうど地面スレスレを掠めたところで、私の目の前に、落ちていったあのプレゼントが現れる。
「おっとと危ない! プレゼントを落としてしまうところだった!」
37:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/12/25(火) 02:25:27.16 ID:ciVG5wjy0
――さぁ、舞台は整った。私は落ち着いて喉をやわらげたのち、普段とは違う中性的な声で、幸子に話しかける。
もちろんこの声は、私のものではない、サンタの声だ。
……そのつもりだ。
「こんばんは、幸子さん」
100Res/129.21 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。