71:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/27(木) 14:57:58.68 ID:c0RIlJVf0
※ ※ ※
「パパーーーー!! ……こ、これでいいですか!? 本当に、少しの間でも、パパに会えるですか!?」
「来ますとも〜。ずっとここに居てもらうことは出来ませんけど〜…… サンタさんは、良い子のお願いなら、たとえ運命だって変えちゃうんですよ〜」
仁奈ちゃんの部屋を出ると、右側には階段、左側にはベランダがありました。
あえて電気は付けずにいるので、廊下はほとんど真っ暗ですけど、慣れれば何とか見えなくもない感じです。
当然下の階にはご両親がいますが……ベランダの方では、誰にも踏まれていない雪がただ月明かりに照らされています。
来る途中にはまだ空を大きく占めていた雲でしたが、私たちがどたばたしているうちに、大部分はどこかへ行ってしまったようで、今は黒い夜空に月が浮かぶのを、はっきりと目にすることが出来ました。
そんな中、ベランダは道に面していないため、街灯をはじめとする明かりがなく、都会にも関わらずかなり暗くなっております。
つまり……手すりにでも座れば、ちょうど月明かりで逆光になるはず。廊下側から見れば顔などは分からないでしょう。
「パパーーー!!」
そして私の策とは、ご近所迷惑顧みず、ただパパを全力で呼んでもらうことです。
そうすれば、いるはずのないパパが来てくれるのです。
現に今、下の階からはどたどたという足音が聞こえます――さぁ、私もこんな風にのんびりはしていられません。
私はおもむろにベランダに向かい、足下の雪に足跡を残さないよう気をつけながら手すりの一部分の雪を払いのけました。
……足跡を残さないのは気分ですけどね。この方が風景的にすっきりするでしょう〜?
外にはまだ木場さんとブリッツェンの姿は見えません。けど、すぐに来ると信じましょう。
私はしっかり心構えをしてから、廊下から直接、手すりにぴょんと腰掛けます。
「うふふ〜、パパの足音が聞こえて来ますね〜」
「あの音はパパでごぜーますか……って、イヴおねーさん? なんてとこに座ってるです? 暗いし、お月様の光がおじゃまして、きれーなお顔も見えやがりませんですよ」
「あぁ、よかった〜。きれーなお顔が見せられないのは残念ですけど、これは見えなくていいんです〜。あと、私はイヴではなく、名も無きサンタさんということで、一つよろしく〜。サンタさんとの約束ですよ〜」
「? わ、分かったですよ」
「……えへへ、きれいですか〜。えへへ〜……」
仁奈ちゃんにほめられて、ついうっとりしてしまいますが……いつまでもそんな気分ではいられません。
さぁ、話してるうちにどんどん足音が近づいてきましたよ〜。
あとは木場さんが早く来てくれることと、パパが廊下の電気をすぐにはつけないことを祈るだけですね〜。
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