145:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/25(月) 00:03:29.36 ID:4Y9bOK7Ho
店を出て明日香と二人で多分両親が帰宅していないだろう家に帰ろうとしたとき、駅前
の広場で人だかりがしていることに気がついた。さっきまで刺激的な会話を繰り広げてい
たせいで、僕も明日香もお互いが気になって目の前に事件なんてどうでもいい気分だった。
それでも救急車のサイレンとか慌しい人の動きとかを気にしないわけにはいかない。
僕は片腕に抱き付いている明日香の方を見た。
「何かあったのかな」
「さあ、何だろう」
明日香は健気にそう言ったけど、さっきの出来事が頭にこびりついているのは見え見え
だった。この妹はわかりやすいといえばわかりやすい。
僕と明日香が何となくその人混みを見ていると、救急車が到着してたんかを持った救急
隊員が数人降りてきて人混みをかき分けてその中心に辿り着いた。
「病気かな」
「そうかも」
「帰ろうか」
「うん」
野次馬みたいに人の不幸を眺めていてもしかたない。僕たちはその場を後にしようとし
た。
駅に向うにはその人だかりの横を通り過ぎるしかない。駅に向いながら横目で見ると、
ちょうど救急隊員が地面に倒れている人をたんかに乗せようとしているところだった。
目を閉じて身動き一つしないその男は池山だった。
「お兄ちゃん、あれって」
僕の手を握っている明日香の指に力が込められた。
「池山だ・・・・・・」
「何で? まさかあたしがひどいこと言ったせいで博之はやけになって」
「・・・・・・そんなわけないだろう」
僕は否定したけど、さっき店を出て行くときのあいつの混乱した様子ならそういうこと
がないとも言い切れなかった。再びサイレンの音がして今度はパトカーが数台駅前の広場
の車止めの方に進入してきた。
隣にいるカップルらしい二人連れの声が僕の耳に入った。
「ケーサツ来たよ」
「そりゃ来るだろう。でもちょっと遅いよな」
「喧嘩相手の人たちはもうとっくに逃げちゃったしね」
「高校生くらいだよな? 最近の若い子は恐いよ。ナイフでいきなり相手を刺すとは思わ
なかった」
「何かあたしあの場面トラウマになりそう。ばっちり目撃しちゃったし」
「もう忘れよう。俺たちには関係ないし。さっさと飲みに行こうぜ」
「警察に目撃証言とかしなくていいの?」
「こんだけたくさんの人の前で起こったんだぜ。目撃者だらけだし俺たちは早く忘れよう
よ」
「うん」
「最近この辺って物騒だからなあ・・・・・・」
二人連れはその場を離れて繁華街の方に向って行ったのでそれ以上会話を聞くことはで
きなかった。
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