898:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 09:43:12.61 ID:868/ISGe0
最期に、会いたかった…一目だけでも…――
斬られる、はずだった。
しかし、予想した痛みは来なかった。
恐る恐る目を開け――驚愕に目を見開いた。
899:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 09:43:40.15 ID:868/ISGe0
賢吾が奨の襟首を掴むと地面に押さえつけ、その太い首に、刀を突き刺した。
刀が引き抜かれると同時に、鮮血が噴き上がった。
自らの血で全てを赤く染めた奨の目は、もう何も見ていなかった。
物心ついた頃にはいつも近くにいて、近くにいることが当たり前で。
900:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 09:44:30.27 ID:868/ISGe0
プログラム本部となっている御神島小中学校の敷地を出ると鬱蒼とした森が広がっているが、皆が長年踏み締めて出来た道を暫く歩いていくと、アスファルトで舗装された道路に出る。
御神島に設置された道路は、御神島をぐるりと一周できるように巡らされているのに加え、島のほぼ中央に位置する小中学校を起点として南北それぞれの端にある港と西にある灯台を結ぶものと、南北の港を結ぶ道路の東側に大凡平行になる形で商店や診療所といった主要な施設の脇を通るように作られたものがある。
それ程大きくはない島だが、主要な場所には車で行きやすいように整備が施されているのだ。
小中学校の真東にあたる南北をつなぐ2本の道路に挟まれたE=05エリアには、4番目に呼ばれたチーム4人が隠れていた。
901:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 09:44:58.63 ID:868/ISGe0
梨杏に文句を言ってきた星崎かれん(女子十六番)は大袈裟な舌打ちをし、不機嫌な表情を浮かべて梨杏から視線を逸らした。
そう、まずこの女。
大東亜人には似合わない金髪と、中学生らしからぬケバいメイクとチャラチャラとしたアクセサリー類、男を誘っているとしか思えない短すぎるスカート――どんなに頑張って見ようとしても馬鹿以外の何者にも見えない(事実勉強もできない馬鹿だ、この女は)、梨杏が最も忌み嫌う下品なギャルだ。
伝統ある帝東学院において頭の湧いたような、街中で自分は頭が軽い馬鹿だという看板を掲げながら闊歩しているギャルはそれ程数が多くないのだけれど(ギャルがニュース番組などのインタビューを受けているのをたまに見るが、発言も喋り方も態度も全てが馬鹿みたいだ、あんなのと同じ生き物だと思うだけで吐き気がする)、このクラスにはそれが4人も存在している。
902:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 09:45:27.78 ID:868/ISGe0
今はその騒がしさも軽さもなりを潜めており、顔を膝に埋め、時折嗚咽や鼻を啜る音が聞こえる。
軽い男は嫌いだが、うじうじしているのも見ていて腹が立つ。
「内藤くん。
いつまでもうじうじ泣くのはやめてくれない?
903:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 09:46:42.68 ID:868/ISGe0
不意に恒祐が梨杏から離れた――いや、恒祐は大きく目を見開いた状態で自分の意思に反して梨杏との距離を取らされた、という言い方が正しい。
恒祐は襟を後ろから引っ張られ、バランスを崩して仰向けに倒れていた。
「何すんだよ…林崎ッ!!」
904:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 09:47:18.82 ID:868/ISGe0
日比野迅(男子十五番)と水田早稀(女子十七番)が休息を取っている民家から見ると北西に位置するE=06エリアに、迅と早稀が探し回っている対象である芥川雅哉(男子二番)と奈良橋智子(女子十一番)はいた。
「…トモー、ここは神社?」
「…みたいだね、鳥居があるし。
905:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 09:47:56.74 ID:868/ISGe0
そして、戦場において頼りない智子を支えて励ましてくれる優しさ。
星崎かれん(女子十六番)から、『雅哉に騙されてはいけない』と忠告を受けたこともあったが、今智子の隣にいる雅哉の言動に嘘があるとは思えない。
きっとかれんは、派手な外見や気だるそうな態度の中にある雅哉の本当の心を見ていなかっただけに違いない。
智子が惹かれているその心こそが、雅哉の本質だと信じている。
906:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 09:48:29.87 ID:868/ISGe0
伊達に、頭脳レベルが全国平均を大きく上回る帝東学院において、真壁瑠衣斗(男子十六番)・芳野利央(男子十九番)に次ぐ、クラス・学年共に第三位の成績を修め続けてはいない。
少ない情報の中、智子が最も警戒しているのは、榊原賢吾(男子七番)・松栄錬(男子九番)・鷹城雪美(女子九番)・湯浅季莉(女子二十番)という一見バラバラに見えるが個別に見れば関係性のある6班だ。
その根拠は、プログラム開始直後に響いた銃声だ。
最初に出発した木戸健太(男子五番)・城ヶ崎麗(男子十番)・朝比奈紗羅(女子一番)・鳴神もみじ(女子十二番)という麗とその取り巻きで構成された5班と、6班のみが教室を出た時点で銃声が響いた。
907:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 09:50:05.92 ID:868/ISGe0
小石川葉瑠(女子五番)といえば、遼子や未久と仲が良く、教室でいつも大きな声で騒いでいるムードメーカーの一人で、頭の回転が速い女の子だったが、先程の放送で名前を呼ばれた。
ライド(担当教官)曰く、リーダーの相葉優人(男子一番)の死亡により、首輪が爆発したことが死因となった。
その場に居合わせたということは、智子たちの首にも巻き付いている首輪が爆発するところを目の当たりにしてしまったのだろう。
想像しただけで胃の中の物が逆流してきそうだった。
1002Res/954.78 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。