112:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 01:11:33.49 ID:7LnCOhGJ0
ジュピターとエントリーが被った事に気づいたのは、オーディション本番の三日前だった。
迂闊だったと、プロデューサーは自分のチェックの甘さを悔いた。
すぐにエントリーを取り下げようと受話器に手を伸ばした時、雪歩がプロデューサーに嘆願したのだ。
「プロデューサー―――大丈夫です、やらせて下さい」
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2013/03/24(日) 01:14:15.55 ID:7LnCOhGJ0
第二京浜を北上し、戸越から首都高速2号目黒線に乗る。
途中ある一ノ橋ジャンクションと浜崎橋ジャンクションで、銀座方面に向うよう都心環状線を渡れば、やがて汐留出口が見えてくる。
事務所から行けば、大体30分程度の道のりだ。
目本テレビへ向う車内で、真は雪歩の体調を気遣った。
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2013/03/24(日) 01:16:12.94 ID:7LnCOhGJ0
「あれから、美希ちゃんとは――?」
雪歩が、それとなくプロデューサーに聞いた。
プロデューサーが美希と連絡を取り合い、幾度か会っていることは、雪歩だけでなく事務所の皆も周知の事だった。
「ん? あぁ、美希な。相変わらずだよ」
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2013/03/24(日) 01:18:24.70 ID:7LnCOhGJ0
律子からのアドバイスもあり、目本テレビには時間に余裕を持って到着した。
大規模なオーディションだと、入場口も分からないほど会場となる建物が巨大だとのことである。
しかし、下調べを入念に行っていたこともあってか、会場には迷わずアッサリと着いた。
「フヅテレビの話を聞いてたから、ビビって先方の担当者に何度も確認しちゃったけど、来てみればなんてことは無かったな」
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2013/03/24(日) 01:20:48.85 ID:7LnCOhGJ0
「ごめんね。もっと早く来ようって思ってたけど、遅くなっちゃったの」
「ううん、私達も早く着きすぎちゃったの。まさか来てくれるなんて――!」
雪歩は、嬉しさのあまり興奮が抑えられずにいる。
「どうしてここが?」
117:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 01:23:01.77 ID:7LnCOhGJ0
外で一度通しで練習してから、会場の待合室に入った。
先ほど入った時とは打って変わって、大勢のアイドル達がオーディションの開始を待っていた。
真は、その光景を見ただけで身震いがしてきた。
「真クン、大丈夫?」
118:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 01:24:55.39 ID:7LnCOhGJ0
「変なの」
「やっぱそう思うよな。あぁそう、ジュピターも文句言ってたぞ」
「えっ?」
ジュピターという言葉に、真と美希は敏感に反応した。
119:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 01:26:06.16 ID:7LnCOhGJ0
今日の流行はボーカルだった。
以前の雪歩なら、擦れるような声量しか持っていないために逆風となっていたかも知れない。
しかし、やれるだけのトレーニングは行ってきたのだ。不安は無い。
返されたシューズを履いて靴紐を結び、雪歩は目を閉じて大きく深呼吸をした。
120:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 01:27:12.04 ID:7LnCOhGJ0
出始めからターンが待っていたが、雪歩は難なくこなした。
テンポも速く歌いこなすのが難しい曲だが、しっかり子音を発音しメロディに乗せて歌えている。
滑舌だって、やよいと一緒に専属のコーチに習ってきたのだ。
当然のことだが、最後まで全力で歌って踊りきるだけの体力も十分につけている。
121:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 01:29:42.31 ID:7LnCOhGJ0
間奏に入った。
大サビを迎えればフィニッシュだ。
普段の練習以上の実力を本番で出す底力は、もはや雪歩の代名詞だ。
ステージが終わったら、考えられる限りの賞賛の言葉をあの子にあげよう。
122:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 01:32:05.55 ID:7LnCOhGJ0
「残念だったな」
オーディションを終え、冬馬がぶっきらぼうに雪歩に言った。
雪歩は、まだ椅子に座ったままうなだれている。
「この間、レベルが低いとか言って―――悪かった」
ボソッと付け加えた後、冬馬はツカツカと靴音を鳴らして会場を去った。
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