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2013/03/24(日) 02:34:47.31 ID:7LnCOhGJ0
【8】
「俺は、娘がアイドルになることに初めから反対していた」
雪歩の父は、律子の目を見据えて言った。
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2013/03/24(日) 02:36:34.26 ID:7LnCOhGJ0
萩原家は、足立区の静かな住宅街にあった。
インターホンを鳴らすと、黒いスーツに身を包んだ坊主頭の若い男が出てきた。
細身だが、目の鋭い男だった。
名前と用件を告げると、丁寧に中へ案内された。
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2013/03/24(日) 02:39:30.53 ID:7LnCOhGJ0
雪歩の父は、背の高い男だった。
年齢は50歳前後のはずだが、そんな年には見えなかった。
肌のつや、身のこなし、そして何よりも引き締まった端正な顔立ちを見ていると、30歳代の前半くらいにも見えた。
雪歩の父の後ろには、それまで律子を案内していた坊主の男がずっとついていた。
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2013/03/24(日) 02:41:25.18 ID:7LnCOhGJ0
フン、と雪歩の父は小さく鼻を鳴らした。
律子は、目の前の男の一挙手一投足から目が離せなかった。
いつ、どんなに危険な一振りが繰り出されるか知れなかった。
その時、入り口の襖がスーッと開いた。
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2013/03/24(日) 02:44:26.03 ID:7LnCOhGJ0
「俺はあなた方を憎んでいる」
律子が湯飲みを置いたのを見計らい、雪歩の父が突然切り出した。
律子は、黙って頷いた。
内心は、改めて面と向かって言われたことで、さらに緊張が増していた。
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2013/03/24(日) 02:47:16.41 ID:7LnCOhGJ0
「雪歩さんは――」
律子は、膝の上に置いた手を握り締めた。
「―――雪歩は、私達の事務所の現状を憂いていました。
自分が何とかして変えなくてはと、きっと自分にそう言い聞かせ、これまで頑張ってきてくれていたのだと思います」
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2013/03/24(日) 02:49:43.19 ID:7LnCOhGJ0
「政治家みてぇな事を抜かしやがって」
雪歩の父は、鼻を鳴らした。
「なら、あなたは今日ここへ何をしに来たのだ。
娘を連れ戻すでもないのなら、わざわざ自分の決意表明を俺に聞かせにきたのか?」
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2013/03/24(日) 02:51:06.67 ID:7LnCOhGJ0
「―――確かに渡しておく。
確認をするが、あなたは雪歩がアイドルを続けなくとも構わない、それで良いのか?」
「はい。ですが――」
そう言いかけて、律子は笑みを浮かべた。
167:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:54:12.44 ID:7LnCOhGJ0
「しかし、時にそれ以上のものを感じさせるほどの頑張りを、あの子は見せていました。
私達が心配になるほど、ずっと遅くまで練習をしたり、見えない努力を重ねてきました」
雪歩の父は頷いた。
「それは知っている」
168:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:56:34.29 ID:7LnCOhGJ0
若頭が先導し、三人は縁側を少し歩き、先ほど通った庭園まで戻った。
「あれは何だと思う」
雪歩の父は、庭園の隅に立っている離れを指差し、律子に尋ねた。
唐突に聞かれたため、律子は何のことやら見当もつかず、首を捻った。
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