162:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:41:25.18 ID:7LnCOhGJ0
フン、と雪歩の父は小さく鼻を鳴らした。
律子は、目の前の男の一挙手一投足から目が離せなかった。
いつ、どんなに危険な一振りが繰り出されるか知れなかった。
その時、入り口の襖がスーッと開いた。
163:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:44:26.03 ID:7LnCOhGJ0
「俺はあなた方を憎んでいる」
律子が湯飲みを置いたのを見計らい、雪歩の父が突然切り出した。
律子は、黙って頷いた。
内心は、改めて面と向かって言われたことで、さらに緊張が増していた。
164:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:47:16.41 ID:7LnCOhGJ0
「雪歩さんは――」
律子は、膝の上に置いた手を握り締めた。
「―――雪歩は、私達の事務所の現状を憂いていました。
自分が何とかして変えなくてはと、きっと自分にそう言い聞かせ、これまで頑張ってきてくれていたのだと思います」
165:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:49:43.19 ID:7LnCOhGJ0
「政治家みてぇな事を抜かしやがって」
雪歩の父は、鼻を鳴らした。
「なら、あなたは今日ここへ何をしに来たのだ。
娘を連れ戻すでもないのなら、わざわざ自分の決意表明を俺に聞かせにきたのか?」
166:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:51:06.67 ID:7LnCOhGJ0
「―――確かに渡しておく。
確認をするが、あなたは雪歩がアイドルを続けなくとも構わない、それで良いのか?」
「はい。ですが――」
そう言いかけて、律子は笑みを浮かべた。
167:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:54:12.44 ID:7LnCOhGJ0
「しかし、時にそれ以上のものを感じさせるほどの頑張りを、あの子は見せていました。
私達が心配になるほど、ずっと遅くまで練習をしたり、見えない努力を重ねてきました」
雪歩の父は頷いた。
「それは知っている」
168:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:56:34.29 ID:7LnCOhGJ0
若頭が先導し、三人は縁側を少し歩き、先ほど通った庭園まで戻った。
「あれは何だと思う」
雪歩の父は、庭園の隅に立っている離れを指差し、律子に尋ねた。
唐突に聞かれたため、律子は何のことやら見当もつかず、首を捻った。
169:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:58:28.13 ID:7LnCOhGJ0
雪歩の父は、鼻を鳴らした。
今度は、笑みが混じっているように思えた。
「確かに、あなたの言う通り、子供というのは親の思うように育たないのが常のようだな」
そう言った後、雪歩の父は表情を改めて続けた。
170:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 03:00:19.14 ID:7LnCOhGJ0
プロデューサーが、血溜まりの中にうつ伏せで倒れている。
その横で、美希がまっすぐにこちらを見上げている。
美希の顔には少し影がかかっており、表情は分からない。
しかし、明らかに階段を上った先―――踊り場にいる自分を睨み上げている。
171:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 03:01:58.69 ID:7LnCOhGJ0
「―――雪歩――――雪歩、開けてもらえる?」
母が呼ぶ声がして、雪歩は目を覚ました。
部屋のドアを、コンコンと叩く音も聞こえる。
日は沈んでいた。
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