72:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/23(土) 23:16:21.17 ID:sFFUNv8Z0
「呼ばれなかった方はお帰り頂いて結構です。お疲れ様でした」
審査員はジュピターのエントリー番号を告げると、最後にそう付け加えた。
合格者発表よりも前に、美希は歌い終わった後、逃げるように会場から既に去っていた。
後を追おうとする雪歩を、律子が制した。
「残念でしたね」
身支度を整えて帰ろうとした律子達に、北斗が声をかけた。
社交辞令のつもりなのだろう。
「そうでもないわ」
律子は、極めてドライに返した。
彼らに対し、悔しがる筋合いすら無いのは、律子も良く理解していた。
「おい、負け犬と何話してんだ。行くぞ」
冬馬から急かすように声をかけられたため、北斗は会釈して律子達の下を去った。
律子達は、その後ろ姿を呆然と見つめていた。
ジュピターの実力は、厳しい練習に裏打ちされたものだった。
数ヶ月前、彼らと合同レッスンした時に、それは十分理解していたはずだった。
だが、練習の大切さを美希に実感させることができなかった。
事務所に帰る途中、律子は一旦車を停めた。
「ちょっと、ごめんね―――」
そう言って、律子は泣いた。
オーディションに負けたことに対する悔しさではなく、担当のアイドルをまともに管理できなかった悔しさからくる涙だった。
雪歩は、普段は気丈な律子のその情けない姿をただ見つめることしかできなかった。
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