351:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/08(土) 06:24:18.43 ID:Onzl2ZvFo
彼女はひらりと体を翻して、わたしの腕の中から地面へと着地した。
手のひらが泥で汚れてしまったことに気付き、レインコートで軽く拭ってみた。
汚れは広がっただけだった。
わたしは泥を取ることを諦めて、猫の姿を追いかけた。
猫はわたしから少し距離を取ると、ついてこいと言わんばかりに振りかえる。
わたしと目が合うと、ゆっくりと歩きはじめた。
まるで道案内を買って出てくれたみたいだった。
さすがのわたしも、これはおかしい、と思った。
でも、考えてみても結論は出なかった。いずれにしたって心当たりがあるわけではなかったのだ。
結局、何も考えずに歩き回るだけなら、この猫についていくのも選択肢のひとつではある。
猫は姿が遠くなり、霧の中にかすみはじめる。わたしはまだ逡巡していた。
それを見透かしたように、もう一度彼女は振りかえった。
そして促すように、何度かその場で走り回った。
仕方ない、とわたしは思う。
ついていこう。こうなったら賭けだ。いずれにしたって猶予はそんなにない。
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