過去ログ - 八幡「徒然なるままに、その日暮らし」
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342: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/15(月) 22:50:00.00 ID:9XZaaUq/0
 不満げな表情で見下ろしてくる雪ノ下。
というか何で俺が悪いみたいな空気出してんだよ、お前は。
俺の非難の眼差しを、しかし雪ノ下は軽やかにスルー。

「それで、何を読んでいたのかしら? まさかその動揺ぶり、いかがわしい本でも見ていたのではないでしょうね?」
以下略



343: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/15(月) 22:55:55.99 ID:9XZaaUq/0
「だってあなた、普段はブックカバーなんて使ってないじゃない。隠すような疾しいことがあるのかと疑うのは自然なことでしょう」
「ブックカバー使ったぐらいで疑われるのが自然とか、普段の俺ってどんだけ信用ないんだよ。昨日買ったばっかの新品だから使ってるだけだっての」
「紛らわしいわね、普段からそうしていなさい」
「何でそんな上から……」
「それで、その本は面白いの?」
以下略



344: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/15(月) 23:02:19.01 ID:9XZaaUq/0
 だけのようだとは言ったものの、これまでの雪ノ下のことを思えば、これは割と見過ごせない事象である。
何しろ“あの”雪ノ下雪乃だ。
口を開けば毒舌、目を向ければ蔑視、迂闊に近づこうものなら罵倒と共に撃退されるってのが基本姿勢だったのに。
それが今週に入ってからというもの、こういう風に急に距離を詰めてくることが増えたように思う。
座る席にしても、今まではテーブルの端と端だったのが、机を挟んだ斜向かいに座るようになってるわけだし。
以下略



345: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/15(月) 23:04:29.00 ID:9XZaaUq/0
「何? その薄ら笑いは? 不気味だから止めて頂戴」
「いや、お前さ、もう少しはオブラートに包む努力とかしたらどうだ?」
「心外ね、かなり包んであげたつもりなのに」
「包めてないから、全然包めてないから。何なら思いっきり突き破ってるレベルだから」

以下略



346: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/15(月) 23:14:18.19 ID:9XZaaUq/0
 気を取り直すように、席に改めて座り直して伸びをすると、身体がばきばき鳴った。
結構長い時間本に集中していたせいで固くなってしまっていたみたいだ。
窓の外へ視線を向けるが、空模様はまるで変わらず、しとしとと雨が降り続いている。
別に雨が嫌いというわけでもないけど、こうも続くとさすがにうんざりしてくるな。

以下略



347: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/15(月) 23:20:20.22 ID:9XZaaUq/0
「鬱陶しいと言えば、あなたの髪、随分伸びてきたんじゃない?」
「できれば鬱陶しいという単語で思い出してほしくなかったな、それ」
「早めにカットに行ってきなさい、正直とても見苦しいわ」
「そこまで言うか」
「自分では気付いていないのかもしれないけれど、あなたの目と長髪の相性は最悪よ。不審者か自殺志願者にしか見てもらえないと思うわ」
以下略



348: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/15(月) 23:27:05.46 ID:9XZaaUq/0
「いやでもこれ、まだそんな言われる程は伸びてないと思うけどな。また今度行くから、それでいいだろ」
「呆れたずぼらね、他はともかく、その前髪は自分で気にならないの? 目に入りかけてるじゃない」
「あぁ、たまに入るな、確かに」

 結構髪質が硬めなので、目に入るとちょっと痛いのだ。
以下略



349: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/15(月) 23:32:02.85 ID:9XZaaUq/0
「切りなさい」
「お? いやちょっと待って、その言い方はおかしい。だから今金無いし、また今度行くから、それでいいだろうが」
「良くないわ、今すぐ切りなさい。言っておくけれど、これは周囲を不快にさせない為というだけでなく、あなたの為でもあるのよ?」
「基本俺の髪に関することなのに、何で俺の為がサブ扱いなんだよ、順番おかしいだろ」
「いい? 髪が目に入ることで視力障害を起こすこともあるの。これ以上目つきが悪くなるような要因を放置しておくなんて、断じて許されないことよ」
以下略



350: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/15(月) 23:39:41.46 ID:9XZaaUq/0
「……そう、それなら仕方がないわね」

 数秒の溜めの後、雪ノ下は首を振りつつ立ち上がった。
表情にも態度にも動きにも、やれやれ本当はこういうことなんてしたくないのだけれど、と言わんばかりの倦怠感が滲んでいる。
そして俺の方には目もくれず、一直線に自分の鞄へと歩いて行く。
以下略



351: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/15(月) 23:45:30.54 ID:9XZaaUq/0
「今何か不愉快なことを考えられていた気がするのだけれど」
「気のせいだろ。というか勘弁してください」
「なぜ謝るの? やっぱり良からぬことを考えていたんじゃない」
「違う。いきなり刃物持ってこられたら誰だってびびるだろうが」
「その結果反射的に謝るのね。その遺伝子に刻み込まれているかのような卑屈さは、とてもあなたらしいと思うわ」
以下略



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