136: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/07/04(木) 03:06:09.49 ID:zpMoHYvIo
「……ここに来るのも、久しぶりですねー」
『そうだな。最後に来たのは……、去年の初詣、かな?』
二人してやってきたのは、かつて茄子さんと出会い、そして俺を変えてくれた、あの小さな神社。コインパーキングに車を止め、石段を一歩、一歩と登り始める。茄子さんは自然に俺の腕を取り、俺は先導するように脚を動かす。
そして、石段を登り終える――。
『いつ来ても、本当に他の人を見ないな』
「本当、そうですよねー……」
出迎えてくれるのは、雑木林の葉が、こすれ合う音だけ。神主も、巫女もいない。あるのは寂れた本堂だけだ。
あれから何度も何度も、この神社には足を運んでいる。その間も、誰とも出会うことはなかった。本当に、誰も来ない、忘れられた神社だったのだろう。
そこで俺たちは出会った。本当に、幸運という言葉でさえ霞んでしまうほどの剛運。それが俺の物なのか、それとも茄子さんの物なのかははっきり言って分からない。いや、十中八九、彼女の物だろう。
それでもそんなことは、今は些末なことだった。本道の前まで来る。さびた賽銭箱と、よれた縄の付いた大きな鈴があるだけの、小さな本堂。
そこで俺は彼女に向き合い、笑って言う。
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