45: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/06/18(火) 17:57:25.63 ID:gq9TOo4jo
そうして、応接室から出ると、さっきの若いプロデューサーが待っていた。
「Pさん、玄関まで送らせていただきます」
『ああ、すみません。わざわざ』
「いえ、プロデューサー業がずっと夢でしたから。これも立派な仕事ですよ」
彼は笑った。清々しいほどの笑顔だ。俺もあんな笑顔を浮かべていた時期があったと、少し感傷的になる。そこから、いくつか会話をしたのは覚えているが、話の内容までは覚えていなかった。
もうすぐ、自分の手から茄子さんが離れるのだ。これまでもアイドルが手を離れていくときは、胸がざわめいた。
ただ、今回はちょっと、感覚が違う気がする。それが何かは、俺には分からないが……。
『よろしくお願いします』
「……はい?」
唐突に口から言葉が出た。もしかしたら、本当は涙を出したかったのかもしれない。どうやら薄情な俺は、小さな水滴一つ、目からこぼすことが出来ないらしい。
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