76: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/06/26(水) 03:02:32.96 ID:v8bhYI//o
『……四年前、俺のせいで潰れたプロダクションがある』
気が付けば、俺はそう言っていた。ひびの入った陶器から水が漏れだすように、するすると言葉が漏れだしている。
その俺を、茄子さんは少し頬を濡らして、見上げる。距離はゼロに近しい。キスをしようと思えば、出来る距離じゃないだろうか。
そうやって、自分に冗談を言って誤魔化そうとするも、言葉は止まってくれない。勘弁してくれ。この期に及んで、彼女に軽蔑されたくはないんだ。
『社長と、アイドル一人の小さなプロダクションでね。就職活動してたら、急に声を掛けられたもんだから、当時は驚いたなぁ。茄子さんも見ただろう、社長と、彼女と、俺が写っている写真』
「あの写真、ですか……?」
『ああ、俺が社長に一人前と、認められたときにね。入社してから半年だったよ。我ながら、驚異的と思えるね』
訥々と俺は話す。身を切るような苦しみは、もうない。今なら、自然に笑えそうだった。嫌われるなら、嫌われてもいい。それで茄子さんが俺を忘れられるきっかけになるなら。
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