過去ログ - モバP「七人目の正直」
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77: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/06/26(水) 03:02:58.80 ID:v8bhYI//o
『当時の俺は、まあ世間の知らないガキだったよ。ある日、唯一の所属アイドルに移籍の話が来てね。大手の事務所だったよ。俺は乗り気じゃなかったが、社長は担当プロデューサーの俺ごと移籍するなら、って条件で交渉に臨んだよ』

 思えば、社長はいつでも俺とアイドルのことを考えていた気がする。あの人の下でいろんなことを学んだ。アイドルに対する接し方、体調とスケジュールの管理、事務処理やトレーニング技術、果ては経営ノウハウまで。

『向こうの態度は、横柄そのものだった。まあ、でも大手はこんなものだと社長に言い聞かせられてたし、腹は立っていたけど我慢は出来た。それより向こうに移籍した後に、上手く彼女がやっていけるよう、尽力する事ばかり考えていたね』

 少し目を閉じて思い出す。温和な社長の顔が、今でも目に浮かぶ。そして、担当していた彼女の顔も。思えば、親子のように仲のいい二人だった気がする。

 そんな場所に、自分がいてもよかったのだろうか。その思いが、今も胸に去来している。俺がいなければ、あの二人はきっと今でも、つつましいながらも仲良く活動できていたに違いない。

『だが、向こうの社長が言った次の言葉に我慢できなかった。うちの社長のことを馬鹿にしやがったんだ。”あんたの所みたいな、クズプロダクションにはやはり彼女はもったいない”ってね』

 目を閉じたまま、俺は吐き捨てるように言った。今思い出しても、腹の中が一瞬で煮えくり返る。あの時ほど、俺は怒ったことはないだろう。自分でも、よく覚えていない。ただ、怒ったことだけを覚えている。



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