9: ◆m03zzdT6fs[sage saga]
2013/06/12(水) 03:25:26.22 ID:XCXUAY/Ho
『ところで、名前を教えてくれたってことは……』
「はいーっ! 少しお話を聞いてみたいと思いました!」
『本当か……っ! いや、ありがとう、茄子さん! 君ならきっと、いや間違いなくトップアイドルになれる! 言い切ってもいいぞ!』
一気に胸のつかえと肩の荷が下りた気分だ。大きな声が出てしまう。思わず手を取ってしまいそうになるが、ぐっとこらえる。
まだ信頼を得ていないのに、そんなことをしてしまえばせっかく興味を持ってくれたのが台無しになってしまう。近頃はその手のスキャンダルも多いし、こんなことで身を滅ぼすわけにはいかない。
お陰様で、行き場を失った俺の手は、しばらく宙を浮遊した後、やがて穴に隠れるように俺のポケットへと収まる。
「ふふ、やっぱり面白い人ですねっ」
その様子を見て、彼女はまた笑う。やはり、俺の目は彼女の顔を見てしまう。……どうやら、彼女は早々に、一人目のファンを獲得してしまったらしい。俺としたことが、不覚を取ったようだ。
ただ、こんな気分は久しぶりだった。笑みこそ浮かべないが、俺は穏やかに彼女を見る。
そして彼女は、笑いながら言った。
「とりあえず……、宜しくお願いしますね、Pさんっ♪」
――これが俺と、俺にとって七人目の担当アイドルとなる、鷹富士茄子との出会いだった。
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