130: ◆.g97gKoujg[sage saga]
2014/05/29(木) 23:12:19.21 ID:AYh6U4af0
  
  
  吾妻屋敷の外には視界一面の田園風景が広がっていた。 
 風に運ばれた業雲が月の光を遮り、辺りには雨を呼んでいるかのような蛙の群唱が鳴り止まない。 
  
 正面の山で交互に明滅を繰り返す二対四つの光が凉一の目に入った。?? 
  
   
  (あれって……) 
  
   
 その光は凉一に見覚えのあるものだった。 
 実家から北東の方向に見える山に建つ二本の鉄塔……明滅する光はそこに設置された航空障害灯だ。 
  
   
  (山の形も同じ……まさか!?) 
  
   
 凉一は小学生の頃に社会科の授業で『自分の住む市の地図を描く』というグループ研修を思い出した。 
  
 実際に児童達が市内を散策して、自分の住む土地の地図を完成させるというその授業は、普段のそれとは違い新鮮で楽しかったのを覚えている(ちなみに凉一のグループは市西武の担当だった) 
  
 市の中心を流れる川を挟んで北部に広がる田園地帯、更に北にはその山がある。凉一の実家は市の南部、駅近くだ。 
  
   
  「ベルは……ボクと同じ市内に住んでいたのか?」 
  
   
 狐につままれたような気分とはこの事だろう……七年前のあの日以降、幼い凉一はマリアヴェルを探していた時期があった。 
 彼女と出会った隣町の山、その麓、町内を駆けずり回ったがマリアヴェルの姿を見つける事は叶わなかったのだ。 
   
  
  (……行こう) 
  
   
 凉一は南部に続くであろう農道に歩を進めた。 
  
 ただ形が似ているだけの山かもしれない、ここは自分の住む街と遠く離れた場所かもしれない……どちらにしても進めば判る事だ。 
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