過去ログ - 文才ないけど小説かく(実験)4
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117:ルカ(お題:妾の産んだ女の子と本妻の産んだ男の子) 3/6 ◆/xGGSe0F/E[saga sage]
2013/07/25(木) 18:09:18.95 ID:lYHSJ4eN0

 瑠伽は一週間に一度ほど、何かと理由を付けられて独房に閉じ込められるのが常だった。その理由はたいてい親父か母親
が、適当にでっち上げたようなくだらないものだった。廊下を歩く音が耳障りだったからとか、いやらしい体をしているか
らだとか、学校のテストで百点を取れなかったからだとか。それはどう聞いても理不尽だとしか思えない理由だった。僕と
瑠伽の間には、親父たちの差別による絶対に認めたくない嫌な格差があった。それは僕にも瑠伽にも、どうしようもできな
いものだった。
「なんでこの家を出て行かないの?」
 独房での密会をするときに、僕はたまに瑠伽にそう水を向けることがある。どう考えたって、この家で暮らすよりは孤児
院で過ごす方が、まともに生きていけるような気がするからだ。
「出て行ったって、同じような事になるよ」
 瑠伽はいつも面倒くさそうに、そう答えた。
「例えば、孤児院に引き取ってもらえばいいじゃないか」
「そうしたって同じ。どこかの金持ちか、はたまたこの家のオジさんが、孤児院に大金を渡して私を引き取ってさ、同じよ
うな事をするんだよ」
 確かに瑠伽は、大人たちの欲望の対象になるような圧倒的な美しさを放っていた。僕自身の感覚としても瑠伽は、今まで
見たどの女性よりも美しかった。すらっと長い手足と、白いカットソーをつんと押し上げるように突き出された胸は、男の
視線を釘付けにする。顔立ちもきりっとしていてクールな感じの美人だし、何より目に力があって視線を吸い寄せられる。
十五歳と言う年齢は、彼女の瑞々しさと、肌の艶やかさ、その健康的な美しさと、大人になる直前の太ももや首筋から漂う
妙な艶めかしさのアンバランスな感じが、不思議な魅力を生み出している。
「もしかしたら、どこかの良心的な家族が瑠伽を引き取ってくれるかもしれないじゃん」
「それはそれで、もう駄目だよ、私。もう純粋な頃には戻れない。どんなに優しくしてもらっても、私はもう誰も信じたく
ない。この生活に慣れた私は、もう大人を百パーセントの善人だとは見れない」
 瑠伽はそう言って顔を伏せ、自分の髪を指で巻いたり梳いたりする。
 僕は瑠伽とその会話をするたびに考えてしまうことがある。もし僕がこの家の何もかもを捨て、身分や地位を捨て、瑠伽
と共に駆け落ちをしたらどうなるだろうか。瑠伽を救い出せるだろうか。彼女は僕に付いてきてくれるだろうか。高校を卒
業して、親父たちの目を逃れて北欧辺りにでも行って、つつましく働きながら暮らせたりはするのだろうか。僕の勇気さえ
あればこの状況は変わるのだろうか。瑠伽と壁越しに話をしていると、そんなもやもやとした思いが、ずっと僕の中にくすぶ
り続ける。けれど、僕はそれを実行できないだろう。理由は分からない。この家に飼いならされてしまっているのか。僕には
そこまで実行する勇気が、持てないでいる。怯えてしまっているのだろうか。刷り込まれてしまっているのだろうか。権力や、
社会の力という圧倒的なものを。親父たちの血が流れている僕は、親父たちが行う悪に逆らえないのだろうか。



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