10: ◆tSiWM5GIyDZg[saga]
2013/07/14(日) 18:18:53.08 ID:EnRHzSex0
「『いいえを選ぶ。どうせ、噂なんだからな』そう言って、彼は選んだ」
「その日から、彼は一変していた。どこに行っても、彼はおかしかった」
「彼の一挙一動は、わたしたちのそれとは、なんだか、違う気さえした」
だから、絶対に『いいえ』だけは選ばないで。真剣な声音で彼女は言った。
あなたには、そうなってほしくはないの。あなたは、わたしが幸せにする。
そうも続けていた。僕は、彼女のあまりある気迫に押されていると感じた。
「大丈夫だよ。僕は、幸せなんだから。そんなことはしない。心配ないよ」
「そう。それなら、いいんだけど。絶対よ。辛いのだったら、相談してよ」
もう、それができるようになったのだから。彼女は、静かにそう呟いた。
何だか申し訳なくなってしまい、謝罪しようとした時、雑音が聞こえた。
携帯の充電がないせいか、音質が悪くなってきている気がする。まずい。
「ありがとう。もう、充電もないみたいだ。家に帰って、謝ってみるよ」
「そうよ。そうしたほうがいい。わたし、あなたのこと、信じてるから」
「ああ。そうそう、言おうか迷っていたのだけど、言う。わたし、明日」
通話は切れた。かけ直そうにも、僕には充電できる手立てがなかった。
帰り道の自販機でアイスコーヒーを購入し、それを土産に家へ戻った。
「こんな時間まで、何やってたの」
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