132: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/29(木) 14:39:41.27 ID:9rygtMkWo
「所詮は凡人の第六感だがね。それでも、ないよりマシさ」
社長は柔らかく微笑んだ。そして、顔の前で手を組むと、
「まあ、ともかく、七年間ご苦労だった。向こうでする仕事はもう決まっているのかね?」
133: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/29(木) 14:40:09.24 ID:9rygtMkWo
「ぶっ飛んだ、ね。Pくんも言うようになったじゃないか」
『そうでしょうか』
「そうとも。どうやら、いい方に君は変われたようだね」
134: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/29(木) 14:42:01.70 ID:9rygtMkWo
『ところで、社長。一つ懸念と言うか、私がさしはさむことではないと思うのですが』
社長に頭を上げるように促され、私は頭を上げると、そう切り出した。結果として私はこの事務所を辞め、引き抜きに応じることになったわけだが、それに関しての懸念だった。
「ほう、何かな、Pくん?」
135: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/29(木) 14:46:08.33 ID:9rygtMkWo
「ああ、その件に関してだがね。すでに移籍した二人のアイドルの対価として、来月の頭、つまりは明後日から年度末まで、シンデレラガールズさんの社員が出向してくださるそうだ」
『出向、ですか。派遣社員という事ですか?』
「平日はうちに来て、土曜に向こうへ報告を行う、という形態らしいがね。何というか、基本的にはサッカーのローン移籍とかいう物と思ってくれればいい、と言ってらっしゃったが」
136: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/29(木) 14:46:42.16 ID:9rygtMkWo
と言う事は、出向社員はまだ若手の社員で、実務経験を積ませる目的があるのだろう。シンデレラガールズ側としても、有望な若手社員に経験を積ませることが出来る。
上手く利用されているとも言えるのだろうが、こちらも彼らのノウハウや、築き上げたパイプラインを、彼らが居なくなっても使えるのは大きな利点である。どちらにとっても利点ばかりである。
強いて欠点をあげつらうなら、当の出向社員にとっては、本社がいよいよ稼働するという段にも関わらず、肝心のその本社で働けない事だろう。かなり酷な条件とも言える。
137: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/29(木) 14:47:36.57 ID:9rygtMkWo
「Pくん。我が社に関しての心配はいらない。君は君のすべきことを、そしてしたいことをしなさい。君には、それだけの才能があるのだから」
と言った。こんな恩知らずの私に対して、こんな優しい言葉を掛けてもらえるとは思っていなかった。最悪、罵倒されて追い出されてもおかしくはない。
『……ありがとうございます、社長』
138: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/29(木) 14:48:06.15 ID:9rygtMkWo
『……今まで、お世話になりました』
小さな雑居ビルの出口から外へと出ると、私はビルの方へ向き直り、静かに頭を下げた。この事務所へ、社長へ、同僚へ、感謝を込めてだ。
自らの会社に愛着を持つのは、日本人に顕著にみられる特徴であり、それは良くも悪くも社員と会社を結び付けていると聞く。
139: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/29(木) 14:49:39.15 ID:9rygtMkWo
本日の更新は以上です。
日が空いたわりに書き進められませんでしたが、今月中にはもう一度投下したいと思っています。
思っているだけでできないかもしれませんので、その点はご了承ください。
読んで下さり、ありがとうございました。
140:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/08/29(木) 16:00:58.14 ID:QEYFx6sIo
乙乙
楽しみにしてるよ
141:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/08/30(金) 10:33:58.65 ID:axYJ2J//o
乙ー
142:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/08/30(金) 12:29:42.86 ID:icvT1M6Do
乙乙
社長がかっこいいなぁ。いい大人を書くよね、本当
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