75: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/15(木) 06:50:43.92 ID:06zt3LxLo
『とりあえずは、お疲れのことでしょうし、立ち話をさせるのも申し訳がないのでお入りください。お荷物の方、お預かりいたしましょうか?』
「ああ、いや、結構だ。心遣いだけ受け取っておくよ」
彼はそう言い、ずんずんと歩きはじめる。まるで私が案内されているようだ、と苦笑を一つ零すも、食い下がることはせず、階段を上る。
かん、かんと鉄の階段を踏む音が二つ、木霊する。そうして、私は自分の事務所へと足を踏み入れた。
『ただ今戻りました。それと、お客様です。社長は今どちらに?』
私は扉のすぐそばのデスクで仕事をしていた、二番手のプロデューサーに尋ねる。中肉中背のパッとした印象のない彼ではあったが、仕事の手を止めることはなく、
「ああ、今社長室にいらっしゃいますよ、Pさん」
と、返してくる。こういうあたりは、この事務所のプロデューサーに一貫している事だった。ワーカホリックと言えば聞こえは悪いが、純粋に仕事熱心なのだ。
もっとも、そうならざるを得ないほどの、このプロダクションの自転車操業事情、というものもあるのだが……。
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