過去ログ - 後輩「わたしは、待ってるんですからね」
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421:以下、新鯖からお送りいたします[saga]
2013/09/18(水) 19:08:51.87 ID:HkmCtYrLo

 落ち着け、と俺は自分に言い聞かせた。
 
 前後の状況が思い出せないせいで、奇妙な焦燥感に襲われている。
 ましてや時間が分からないというのは最悪だった。
以下略



422:以下、新鯖からお送りいたします[saga]
2013/09/18(水) 19:09:26.21 ID:HkmCtYrLo

「どうしてこんなことになったんだろう?」

 と俺は訊ねてみた。答えを期待したわけではない。独り言のつもりだった。

以下略



423:以下、新鯖からお送りいたします[saga]
2013/09/18(水) 19:09:52.24 ID:HkmCtYrLo

「うん。知ってるよ。おにいちゃんはそこから出られないんだ」

 唐突に、声の調子が変わった。それでも俺は、相手が誰なのか分からなかった。

以下略



424:以下、新鯖からお送りいたします[saga]
2013/09/18(水) 19:10:20.01 ID:HkmCtYrLo

「黙れよ!」と俺は怒鳴った。

 けれど、声は何かに吸い込まれたように一瞬で消えてしまった。
 最初から存在しなかったみたいに綺麗に。
以下略



425:以下、新鯖からお送りいたします[saga]
2013/09/18(水) 19:11:07.05 ID:HkmCtYrLo

 声はそこで一度途切れた。自分の身に何が起こっているのか、把握できない。
 窓の外の景色は、霧に塗りつぶされていた。ここからはもう、何も見えない。

「……俺のせいだろ、母さんが出て行ったのは」
以下略



426:以下、新鯖からお送りいたします[saga]
2013/09/18(水) 19:12:01.53 ID:HkmCtYrLo

「違う」と俺は言った。でも、何が違うのかは、自分でも分からなかった。

「理不尽なことっていうのは、誰の身にも起こりうる。それが“偶然”きみに降りかかったってだけ。
 そんなの、耐えられないよね。“偶然”自分だけがこんな目に遭うなんて、そんなの、苦しいよね」
以下略



427:以下、新鯖からお送りいたします[saga]
2013/09/18(水) 19:13:50.66 ID:HkmCtYrLo

「なあ、おまえはいつまでそこにいるつもりなんだ?」

 まだ、声は止まなかった。俺は耳を塞いでそれを遮ろうとする。
 でもダメだった。どれだけ強く抑えても無駄だ。声はとても深く入り込んでくる。
以下略



428:以下、新鯖からお送りいたします[saga]
2013/09/18(水) 19:14:22.66 ID:HkmCtYrLo

「でも、人と関わらないのも怖かったんじゃない?」

「……」

以下略



429:以下、新鯖からお送りいたします[saga]
2013/09/18(水) 19:15:23.84 ID:HkmCtYrLo

 扉の向こうから楽しそうな笑い声が聞こえた。誰かと誰かの話し声が聞こえた。
 誰も俺のことなんて気に掛けていない。人々にとって俺はどうでもいい、取るに足らない存在なのだ。

「……俺に、どうしろって言うんだよ。扉は開かないんだ。押したって引いたって開かないんだ。
以下略



430:以下、新鯖からお送りいたします[saga]
2013/09/18(水) 19:16:12.35 ID:HkmCtYrLo

「気持ちはわかるよ。決心して外に出たからって、何も手に入れられないんじゃ、意味ないもんね」

「……手に入れたって同じだよ。俺が扉を開ける。誰かが入ってくる。そしてやがては去っていく。
 何度も繰り返すんだ。扉の閉まる音だけがずっと繰り返される。何も変わらないんだ。
以下略



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