過去ログ - 鷹富士茄子「幸運にめぐまれて」
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17: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2013/08/28(水) 21:19:51.04 ID:0wTRHLBzo

 待つこと暫くした後、漸く男性が戻って参りました。
右手には白い紙袋が提げられており、心なしか甘い香りがより一層と広がったような気もいたします。
男性は待ち受けていた二人を見ると、何やら溜息をひとつ。そして、とんとんと彼女たちの頭を軽く小突くのでした。

以下略



18: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2013/08/28(水) 21:20:30.16 ID:0wTRHLBzo




 三人を見送ると、私は当初の目的を果たすために彼らとは反対方向へと向かいました。
以下略



19: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2013/08/28(水) 21:21:07.94 ID:0wTRHLBzo

 下から上まで白磁に染め上げられた建物は、青々と広がる空に浮かび上がるようにして聳えております。
その空には雲一つなく、燦々とお日様が御座しますのですから、ホテルの一面が白い煌めきを放っており、その輝きたるや目が潰れてしまいそうでした。
それでも凝らして見れば建物の随所には飾り彫りが施されていまして何だか、お子様の私が泊まるには場違いではないのでしょうか、といった気持ちになってしまいます。
門構えも堂々たるものでして、どこぞの宮殿を思わせる風情です。左右の柱にはランプを模したと思われる白熱灯が拵えられており、その両柱を繋ぐようにして緩やかなアーチ状に屋根が渡し架けられていました。
以下略



20: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2013/08/28(水) 21:21:43.83 ID:0wTRHLBzo

 自動ドアを抜けると、当たり一面には真白の空間が広がります。
石畳の床を歩けばこつこつと甲高い音を鳴らします。ロビーに置かれた革張りのソファにはスーツ姿の男性が一人。響く足音にこちらへと目を向けますが、直ぐにその視線は新聞へと戻りました。
受付には若い女性が一人詰めておりました。



21: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2013/08/28(水) 21:22:12.79 ID:0wTRHLBzo

「ご予約の方ですか。」女性は言います。

「いえ、違います。部屋に空きはありますか?」

以下略



22: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2013/08/28(水) 21:22:42.36 ID:0wTRHLBzo

 受付の方はパンフレットを開き、三つのプランをこちらに示しました。
一つは食事なし。一つは朝食のみ。そして最後の一つは朝食と夕食の二食付きです。

「学生さんですか?」
以下略



23: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2013/08/28(水) 21:23:27.38 ID:0wTRHLBzo

「いいですねぇ。私も好きなんです。特に奈緒ちゃんがお気に入りなんですよ。」

そう口火を切った彼女は、次から次へと耳の休まる間もない程に神谷奈緒さんの魅力について語ります。
恥じらった表情が可愛いですとか、ぶっきらぼうな口調から垣間見える思いやりのある性格が良いですとかと、その勢いは最早留まる所も知りません。
以下略



24: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2013/08/28(水) 21:24:07.88 ID:0wTRHLBzo

「当ホテルの従業員が大変失礼を致しました。」

 深々と頭を下げた男性に私は大いに恐縮してしまいます。
多少、面食らってしまったことは否定できませんが、とても楽しいお喋りでしたのです。
以下略



25: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2013/08/28(水) 21:24:33.81 ID:0wTRHLBzo
 
割引を。
いえいえお気になさらず。
ここはどうかこちらの顔を立てると思って。
本当に大丈夫ですから。


26: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2013/08/28(水) 21:25:31.06 ID:0wTRHLBzo
 
 そのような互いに引かぬ押し問答を繰り返して不毛な時間を過ごすこと暫く。
いつまでも続くかと思われた水掛け論は、なんとも間抜けで気の抜けた「くぅ」という音を最後に途絶えます。
穴があったら入りたい。いえ、無いのならば掘ってでも埋まりたい。
この時ほどスコップを持っていないことを後悔することはこの先もきっとないでしょう。
以下略



27: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2013/08/28(水) 21:25:59.35 ID:0wTRHLBzo
 
 三人の間に気まずい沈黙が流れます。
私は一目散に逃げ出したい思いで一杯でしたので、割引を固辞することなど最早どうでも良いことでありました。
女性から手渡されたカードキーには二食付きと記載されており、館内にあるレストランに入る際には係員の方に提示するようにとの説明を受けます。
お礼もそこそこに私は足早にエレベーターを目指します。エレベーターはフロントからよく見える位置にありますので、内心穏やかではありません。
以下略



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