過去ログ - 削板「一緒に暮らさないか、百合子。」
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170: ◆owZqfINQN1ia[sage saga]
2013/10/14(月) 17:22:44.58 ID:KtVeTAu2o

軽口を叩く様子にもおかしなところはない。だけれど、一歩引いたところで少女たちの会話を見ていた少年は、確かにその和やかな光景に違和感を覚えた。
―敢えていつも通りを演じているように見えた、というのが第一印象であった。そもそもが、学園都市第一位ともあろう者が「自身の識らないこと」をそのままにしておく筈がないのだ。
彼女のように賢い人間というのは押し並べて好奇心が強く、また、自身の識らないことを積極的に吸収したがるようなところがある。それどころか、今回起きたトラブルは自身の体の不調である。その身を以て妹達を守り続けたいと思っている以上、彼女が最大の資本である自身の体の不調を放って置く筈がないのだ。

(冥土返しでは、力不足ってか、)

少年は、敢えていつも通りに振る舞おうとしている彼女の様子から、決して彼女が完全に回復したわけではないことを悟った。
医師と彼女の面会はほんの数分で終わった。あの医師が自分の力不足を悟って大人しくしているとも思えないけれど、それでも普通の病室に彼女を寝かしたままで、薬を渡すでも面会を禁じるわけでもないということは、少なくとも彼に今直ぐにどうにかできる事態ではないということなのだろう。

(じゃあ、何だ、)

(今、コイツに必要な物は何なんだ。)

彼女は知っている筈だ。今自身に必要なもの―慌てた様子もなく妹達を宥めすかしているところを見る限り、彼女は自身の体の問題を解決する糸口ぐらいは掴んでいる筈だ。だけれどその弱音を、打ち止めにも、自分にも吐く様子がない。むしろ安心させて、この病室から遠ざけようとしている気がしていた。

(俺じゃ、ダメってか、)

少年はその質問を口にすることができないまま、苦虫を噛み潰したような表情で病室を後にした。



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