過去ログ - 削板「一緒に暮らさないか、百合子。」
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351: ◆owZqfINQN1ia[sage saga]
2014/01/11(土) 17:14:03.28 ID:hPqAd4BYo

「お前、それ読めるのか?」

感情のままに嫌味を言ったところで彼女には通じまい。そう思った男が次の話題として定めたのは、彼女が手にしている本―海原が所有している魔導書の偽典だった。

「どうにか、ってところか。不慣れな言語ってのもあるけど、一々暗号やら何やらギミック噛ましやがって面倒臭ェ。」

「そういう意味じゃないんだがな。」

はぁ、と男は溜息を吐いた。そりゃあ言語は不慣れだろう、南米で現在使われている欧州由来の言語ではなく、もう使われなくなった土着の古語を用いて書かれているものだ。現地の人間にだって読める者は殆どいないだろう。男が訊ねたいことはそんなことではなかった。

「頭痛いとか、気持ち悪いとか、息苦しいとか、そういうのないのかって訊いてんだが。」

彼女はふと思い出したようにこめかみに掌を当てた。男には、その細くて青白い手首が妙に目について仕方がなかった。

「あァ、こりゃこの本のせいなのか。元から体調悪ィせいで、何が原因だか分かンねェンだよ。」

さして慌てる様子もなく彼女は言った。まるでそこらの石に躓いた程度のことを振り返るように素っ気のない態度で、今この瞬間に自身の体調不良に気付いたような具合であった。

「この手の本ってのはそういうもんだ。禁書目録から聞いていないのか。」

「いや、知らなかった。」



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