過去ログ - 【モバマス】「幸子、俺はお前のプロデューサーじゃなくなる」
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6:以下、新鯖からお送りいたします[saga]
2013/09/04(水) 21:31:18.98 ID:DVgSD76f0
 翌日、無断でレッスンを欠席した。
 だけど、家でぼんやりと過ごす時間は予想外に辛かった。心も体も溶け出してしまいそう。
 次の日、だめもとでスタジオに行ってダンスレッスンに顔を出してみた。追い返されるかと思ったけど、あっさりと許可が出る。すごく助かる。今は存分に体を痛めつけたい気分だった。
 大音量で流れているのは、心を芯から震わせるような激しい曲だ。一音一音が刃みたいだなと思う。切れ味鋭い刃に身を投げ出すようにして、ボクは踊りをおどりだす。
 だけど、踊り回る体を置き去りにして、ボクの頭に浮かぶのは彼のことばかり。引っ込み思案だったボクの手を引いてくれた、彼の手のあたたかさを思い出す。笑顔ひとつ上手くつくれないボクをあちこちに連れ回してくれたっけ。
 ボクの額から汗が滴り落ちる。床を濡らしたそれを踏みつけるようにして体を大きくひねる。筋肉が軋んで千切れるところを幻視する。それが今は心地よい。今はただ、何もかもを絞り出して、ばらばらになってしまいたい。
 彼の背中は大きくて、その一歩一歩が新たな道を築くよう。ボクはいつだって道を踏み外してしまいそうで、彼の足跡を必死になぞりながら歩いてきた日々だ。鏡を覗き込めば、そこにはアイドルになる前から見続けてきた、代わり映えしない自分がこわばった笑みを浮かべてる。
 ボクには主役になるだけの価値があるのかな。鏡の中のちっぽけな自分に足を取られて、ボクはいつだって立ち止まる。カワイイですよと虚勢を張っても、生まれ持った顔も体もかわらない。今でも鏡を見るのは怖くて、自分自身の弱さに押し潰されてしまいそう。
 そんな時、彼は振り返って言うのだ。幸子は可愛いと。
 そして、ボクが道を踏み外すとはみじんも思ってないような微笑みを浮かべて歩き出す。


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