過去ログ - 妹神「人族を止めてくれ」 姉神「貴女が何とかしなさいな」
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1:以下、新鯖からお送りいたします
2013/09/18(水) 11:40:31.98 ID:ocD7F65P0
 昔話を、致しましょう。

 時の流れも幾星霜。世界の始まりも忘却の彼方。

 世界を創ったのは、仲の良い双子の女神。姉神ヒュドミッテと、妹神クーアクヤ。

 妹神は、火と水と土と風をかき混ぜて、空と大地と海を創りました。

 偉大なる姉神は、魔翌力に長けた亜人を創って世界を治め、最後に、文化の担い手たる人族を産みました。


妹神「この子が、新しい子? 魔翌力がほとんど無いじゃない」


 木組みの寝台で寝息を立てる唇に、少女がそっと指を当てると、幼子は僅かに身を捩った。

 自分達に似通った幼子は、身を守る固い鱗も、敵を切り裂く鋭い爪も持たず、華奢で、弱々しい。

 さらに世界を動かす魔も持たず。姉は何故、こんな種族を創ったのか。


姉神「仕様なの。繁殖力に重点を置いたから、一人当たりの魔翌力量が、極端に減ったみたい」

妹神「ふーん、成長性重視か。道理で、育ちが早い」

姉神「その分、寿命も短くなったけど。良い労働力となって、あの子達を支えてくれるわ」


 あの子達――この世界の統治を任せた亜人達だろう。

 世界は今が黎明期。人材はいくらあっても足りてない。なるほど、姉は働き手となる種を創った。

 しかし、魔を行使する亜人の下に、魔を持たぬこの子らを付ける意味を、姉は解っていない。

 この世界は、力なき民が生き残れるほど甘くない。でもそれで良い。それが正しい。

 力を持たず、命が短い種だからこそ、奉仕種族と成り得る――この子達は、使い潰すための命なのだ。

 何も知らずに眠り続ける幼子の髪を撫でながら、少女は目を瞑った。

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2:以下、新鯖からお送りいたします
2013/09/18(水) 11:46:49.11 ID:ocD7F65P0
 亜人がいつまでも魔法を研究する一方で、女神の最高傑作たる人族は、道具を造り、世界に技術≠ニいう概念を生み出しました。
 人々の努力は生活を豊かにし、個々の資質に依存していた魔法社会は、誰もが扱える技術社会へと変わり、世界は急速に発展していきました。



以下略



3:以下、新鯖からお送りいたします
2013/09/18(水) 11:50:26.30 ID:ocD7F65P0
 人々が血潮と努力で築き上げた大成を、快く思わぬ存在もいました。
 魔翌力ばかりに頼り、技術の発展を否定し続けた亜人達、そして女神の妹、クー・アクヤです。
 広大な心を持つ姉神と対照的に、矮小なる妹神は、豊かな創造力を持つ姉神と、努力と精進で世界を変えた人族を妬みました。
 その心は徐々に邪悪な闇を産み出し、その嫉妬の炎が抑えきれなくなると、環境の神は深い闇の底へ身を堕とし、魂より溢れた醜い魔が、厄災と化して、世界へ噴出しました。
 それが、後の世で魔族と呼ばれる存在の始まりです。
以下略



4:以下、新鯖からお送りいたします
2013/09/18(水) 11:55:33.09 ID:ocD7F65P0
 邪悪な魔族達は、瞬く間に人々を虐殺し、世界を滅ぼして行きましたが、女神の祝福が施された聖都の守りが硬いと知ると、クーアクヤは姉神に陳謝し、話し合いを提案して自らの城へ招き入れました。しかしそれは、姉神の心優しさを利用した、罠でした。




以下略



5:以下、新鯖からお送りいたします
2013/09/18(水) 11:56:18.12 ID:ocD7F65P0
おしまいです。
原稿用紙10枚のお話でした。ありがとうございました。


6:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/19(木) 14:29:29.44 ID:SESDwytGo
すごく面白かった
読み応えのあるものでした


7:以下、新鯖からお送りいたします
2013/09/19(木) 15:52:05.47 ID:3ZdQNsaM0
ありがとう。そのレスで救われたですよ。


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