過去ログ - 【安価】苗木「今日から2年生か・・・」【ダンロン1+2】
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963:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/11/26(火) 06:27:56.58 ID:BVhJwVsq0
「任せろ、何しろこの俺がついてるんだからな」

咲良の顔がようやく上がった。
涙で濡れているけれど、麗の大好きな笑顔を咲良は浮かべた。
無理していることはすぐにわかったけれど。

「…麗くん、ありがとう…気を付けて…」

「咲良こそ」

もう、触れることは二度とないかもしれない。
この笑顔を見ることも、二度とないかもしれない。
このまま時間が止まってしまえばいいのにとさえ思えたけれど、アキヒロが痺れを切らしかけているのが目の端で確認できたので、麗は咲良から手を離した。

「…奨」

ライドやアキヒロが苛立っているのはわかったが、もしかしたら二度と会えなくなるかもしれない仲間たちに声を掛けるくらい勘弁してもらいたいものだし、気に入らない奴らの命令を聞くなんて御免だったし、ささやかな反抗を示したかったのかもしれないが、麗は咲良の2つ前に座る奨の隣でまたも足を止めた。

奨は顔を上げ、じっと麗を見つめた。
咲良と同じく、幼い頃からずっと傍にいた奨。
大きな体といかつい顔立ちで威圧感が漂っている奨だが、実際には心優しくて大人しくて礼儀正しくて争いごとを苦手としている。
それでも麗が周りのクラスメイトたちと衝突しそうになった時には前に出て麗を護らんとする、いざという時の度胸がある。
麗にとって、誰よりも信頼できる存在は奨なのかもしれない。

「奨、咲良を頼む」

「…はい、麗さん」

静かに、だがはっきりと奨は答えた。
奨と咲良が同じチームになれば、お互いきっとそれが支えになるだろう。
無口な奨にとって咲良は麗同様に数少ない理解者だし、咲良も幼い頃から付き合いのある奨がいれば安心できるだろうから。

麗はようやく教卓の前まで出た。
既にデイパックをエツヤから受け取っていた健太らに倣い、麗もデイパックを受け取ると、座っているクラスメイトたちを眺めた。
誰も彼もが不安げな表情を浮かべ、一部の女子は泣きじゃくっている。
グループ間の壁が低く和気藹藹としていたA組は見る影もない。

「じゃ、時間押してるし、元気にいってらっしゃい!
 最高のフィナーレを、Yeah!」

ライドが急かす。
麗たちがこの教室を出た瞬間に、このプログラムは始まる(いや、もう既に顕昌が還らぬ人となった時点で始まっているのか)。
もう時間を引き延ばすのも限界だろう。
アキヒロやエツヤがピリピリしているのが空気で伝わってくる。

しかし、最後に麗は瑠衣斗に目を止めた。
中等部の入学式の挨拶、誰もが進級試験でトップの成績を修めた芳野利央(男子十九番)がすると思っていたのだが、壇上にいたのは見たことのない少年だった。
利央の頭の良さは当時から麗も認めるところだったのだが、その利央を押し退けてその後の新学期最初の実力試験でも学年首席の座を利央から奪ったその少年、真壁瑠衣斗に、麗は興味をそそられた。
ぜひ友達になりたい、と、麗は無理矢理瑠衣斗を仲間に引っ張り込んだ。
何故か人との関わりを避けたかったらしく最初は嫌な顔をしていた瑠衣斗だったが、いつしか麗が無理に引っ張らなくても一緒にいるようになった。


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