過去ログ - 【安価】苗木「今日から2年生か・・・」【ダンロン1+2】
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985:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/11/26(火) 06:44:39.99 ID:BVhJwVsq0
「えっと、あの…あたし…」
「いーじゃん、ね、せっかくだしちょっとワックとか行こうよ、ね!」

先輩の一人が咲良の腕を掴んだ。
恐らく今初めて話をしたであろう相手の腕を掴むだなんて失礼な奴だ、しかも賢吾をいないものとして話をしているのも腹が立つ。
どうしたものかと思っていたが、咲良が困ったような表情を浮かべて賢吾を見上げたので、賢吾は咲良の腕を掴んでいた先輩の腕を力を込めて掴んだ。

「すみません、離してもらっていいですか」
「は? 何なんだよお前、咲良ちゃんの何?」

先輩は凄んできたが、裕福な家のお坊ちゃんが睨んできたところで、極道の若頭を父に持つ賢吾には何の恐怖も感じさせることはできなかった。
しかし揉め事を起こすのはまずい。
少し考え、賢吾は切り返した。

「いや、クラスメイトですけど。
 俺ら今日出た宿題の調べ物で駅前の図書館行くので失礼します」
「え? あ、ああ、そうなんです。
 だからごめんなさい先輩、さようなら」

2人は頭を下げ、先輩たちの間をすり抜けた。
途中ちらっと振り返ると睨んできていた1人と目が合ったのだが、相手もこれ以上大事にする気はないようでふいっと目を逸らされた。

「あ、あの、榊原くん…助けてくれてありがとうね」
「別に…というか、嫌なら嫌ってはっきり言えばいいだろ。
 言えないならせめてさっきみたいな嘘吐くとか」

少し腹が立っていたこともあり思わず口調がきつくなってしまっていたことに気付き、賢吾ははっと口を押さえて咲良を見下ろした。
視線を感じて顔を上げた咲良の目が少し潤んでいるような気がして、泣かせてしまうのではないかと内心おろおろとしていたのだが、咲良は笑みを浮かべた。

「次にこういうことがあった時は参考にするね、ありがとう」

怖がらせてしまったのではないかと焦ったが、その笑顔を見て少しほっとし、自然と賢吾も小さく笑んだ。
咲良の笑顔を見ると、心が温かくなる。
あまり笑うことがない賢吾ですら、自然と表情が綻ぶ。
きっとあの先輩たちも、咲良のこの笑顔に魅かれたのだろう――賢吾と同じように。



咲良の笑顔に魅かれたはずなのに、今、賢吾は、咲良からその笑顔を奪った。
激しい後悔に襲われる。
どうして、咲良を泣かせるようなことをしてしまったのだろう。

「あらあらお気の毒に…
 ふふっ…計画とは少し違ったけれど…上出来だわ、賢吾」

雪美の落ち着いた、しかしあまりにも冷たい声に、咲良が顔を上げた。
丸くくりっとした愛らしい瞳が大きく見開かれた。
人の良い咲良でもさすがに気付いたのだろう、雪美が咲良たちを油断させるために演技をしながら近付いたことに。

「やっぱり騙したんだな…鷹城…
 計画って何なんだ、君らは何がしたいんだ…答えろよ」

奨の亡骸をずっと見下ろしていた真壁瑠衣斗(男子十六番)が声を発した。
あのド派手な城ヶ崎麗と行動を共にする学年一の秀才で賢吾と同じくあまり話をするのが好きではない寡黙で冷静な男だったと思うが、今は溢れんばかりの怒りの感情を押し殺しているのが見て取れた。
仲間を目の前で殺害されたのだから当然なのかもしれないが。

しかし、雪美はそんなことは意に介さない様子で賢吾の隣に立ち、にっこりと笑んだ。
咲良のそれとは違う、見る者の心を冷やすような笑顔だ。


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