過去ログ - 日向「信じて送り出した七海が」狛枝「2スレ目かな」
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984:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/02/05(水) 04:58:04.74 ID:peHDovB80
「瑠衣斗さん…あの…咲良さんを悪く言うのはやめてください…
 自分も、咲良さんの言ってることは正しいと…思います」

咲良と瑠衣斗の間に奨が割って入った。
奨の大きな背中の向こうで、瑠衣斗がもう一度溜息を吐いているのが見えた。

「別に、悪く言ってるつもりはないよ。
 こんな状況でも上野原も池ノ坊も変わらない…それは良いことなんだろうし。
 まあ、僕は榊原や松栄たち、鷹城だって信じる気にはなれないけど」

瑠衣斗が慎重になるのももちろんわかる。
自分の命が掛かっている上に、瑠衣斗は自分の死で咲良と奨と撫子を巻き添えにしてしまうのだから、何事も疑ってかからないといけないと思っているのかもしれない。
だけど、泣いている女の子を前に聊か冷たいのではないかとも思ってしまう。

「大丈夫だからね、雪美ちゃん。
 瑠衣斗くん、口ではああ言ってるけど、本当は優しい人なの。
 …瑠衣斗くんだけじゃない、季莉ちゃんも松栄くんも榊原くんも…
 みんな、本当は雪美ちゃんを襲いたくなんてないはずだよ?」

皆のことをよく知っているわけではない。
けれども、季莉は少しきつい性格をしているけれども人懐こい子だし、錬は大人しくて本に関しては多くの知識を持っている。
そして榊原賢吾(男子七番)は咲良とは1年生の時から同じクラスで、無口でとっつきにくく自分にも他人にも厳しいけれど、真っ直ぐな人で咲良もお世話になったことがあり、良い人だということはわかっている。
プログラムだなんて、クラスメイトを傷付けるだなんて間違っていると、話せばきっとわかってくれるはずだ。

雪美は目を細めて笑み、咲良の両手を握った。

「ありがとう…本当にありがとう上野原さん…
 そう言ってくれて、あたし、とても嬉しい…!!
 そうよね、話せばきっとわかって――……ッ!!」

雪美の視線が咲良から外れ、咲良の後方へと向けられた。
雪美の垂れ目がちの瞳が限界まで見開かれたのに気付き、咲良も雪美の視線を追って肩越しに振り返り――目を見開いた。
木の陰から、雪美を狙っているという榊原賢吾が現れたのだ。

「きゃああああッ!!」

雪美が悲鳴を上げ、咲良にしがみ付いた。
咲良は咄嗟に雪美を自分の背中の後ろへ隠して腰を浮かせ、賢吾を見上げた。
その隣では、瑠衣斗がボウガンを構えた。

「瑠衣斗くん、待って…
 榊原くん…お願い、話を聞いて…?」

賢吾の小さいが鋭い双眸が咲良を見下ろしていた。
その視線に背筋が凍る思いだったが、それ以上に賢吾のカッターシャツが赤黒く変色しており、顔や首筋にも拭いきれなかったと思われる斑点が付着していることにぞっとした。
季莉や錬と同じく、賢吾もやはりやる気になっているという証拠だ。

怖い…けど…雪美ちゃんを護らなきゃ…
大丈夫、きっと話せばわかってくれる、話さなきゃ何も始まらない…!

咲良は大きく息を吐くと、賢吾の目をじっと見つめた。

「榊原くん、お願いだから、誰かを…雪美ちゃんを傷付けようとしないで。
 プログラムなんて間違ってるの、こんなことやったらダメなの。
 本当は榊原くんもわかってるんでしょう?」

「そこを退け、上野原…俺が何をしようが、関係ないだろう」

威圧感のある声に気圧されそうになるが、咲良は見逃しも聞き逃しもしなかった。
賢吾の目が泳いだのも、語尾が僅かに震えていたのも。
本当は賢吾もわかっているのだ、そうに違いない。


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