過去ログ - 日向「信じて送り出した七海が」狛枝「2スレ目かな」
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989:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/02/05(水) 05:01:48.89 ID:peHDovB80
鷹城雪美(女子九番)は、少し大人しめで目立たないごくごく普通の女の子――と周りから見られるように生活してきた。

雪美の実家は少々という修飾語がとても似合わない程に特殊だ。
何を隠そう、雪美の家は、関東一円でその筋の者からは恐れられている極道“鷹城組”。
祖父が組長を務めており、雪美も家を出入りする祖父の部下たちからは“お嬢”と呼ばれ祭り上げられている。
怪我をしている人間を見るのは日常茶飯事で、時には銃撃戦なども起こり、父は抗争に巻き込まれて既にこの世にはいない。
雪美は、そんな特殊な家庭が、嫌いだった。
誰にも知られたくなかった。

帝東学院は名門校で良家の子息息女が多く通うからか、親の職業などを気にする子どもは少なくない。
特に初等部では、それがとても顕著だった。
出る杭は打たれるという諺があるが、確かに少し周りより突出すれば、それに僻んだ者たちはその者の家柄を知りたがり、例えばそれがごく普通の庶民であれば『家が大したことないくせに、良い気になるな』と嫌がらせを受けるのだ。
しかし、雪美の場合は家のことを知られると恐れられ、悪い意味で目立ってしまう。
奇異の目で見られるのも後ろ指を指されるのも御免なので、雪美は極力目立たないように生活を送ってきた。

化粧などをして目立つことはしない、髪も大きくいじらずに黒いウェーブのかかった髪を後ろで束ねるだけにする、制服も着崩さずスカート丈も無難な長さにする――雪美の顔立ちは誰もが振り返るような恵まれたものでもなければ後ろ指を指され笑われるような落ち目でもないものだし、背丈や横幅も平均的なので、これで良い意味でも悪い意味でも目立つことはなかった。
そして所謂主流派グループと呼ばれるような、クラスの中心になってイベントなどで盛り上がり目立つ集団には決して属さなかった。
だからといって、孤立してはいけない。
孤立しても目立ってしまい、あることないこと噂を立てられてしまう。
目立たない友人を作り、目立たない位置にいるのがベストなのだ。
友人を作ってべたべたとすることなど面倒なことこの上ないのだが(特に女子はどうしていつもどこでも集団行動をしようとするのか。移動教室ならまだしも、トイレにぞろぞろと集団で向かうなど、鬱陶しいことこの上ない)、家庭の事情がバレる方が余程面倒なので仕方がない。
お陰様で、校内で雪美の素性を知る者はほんの一握りしかいない。

クラス替えの度に良さそうな友人を作ってきた雪美が現在のクラスで最初に目を付けたのが、出席番号が近く且つ大人しそうに見えた佐伯華那(女子七番)だった。
物事を深く考えていなさそうだし、中等部から入学してきたという華那であれば人の家柄を気にすることもないだろう――そう考え、声を掛けた。

「あの…佐伯さん…よかったら、お友達になってくれない?
 あたし…あんまり人に声掛けるの得意じゃないんだけど…
 佐伯さん可愛いなって、お友達になりたいなって、そう思って…」

しどろもどろ言葉を紡ぎ出し、大人しく人見知りをするけれども華那には良い印象を持ったから勇気を出して声を掛けてみた、そんな自分をアピールする。
笑顔を浮かべて好意を見せれば相手は受け入れてくれる、これまでの経験で雪美はしっかりと学んでいた――友達を作るなんて、ちょろいものだ。

「あーえっと…鷹城さん…だっけ?
 うん、ありがとー、よろしくね」

ほら、すんなりと友達になることができた。
少し警戒しているような表情を浮かべていたけれど、初めてクラスメイトになった子に話し掛けられれば大抵はそういう反応を示すものなので、気に留めなかった。
同じような手法で、のんびり屋故か友人作りに乗り遅れていた荻野千世(女子三番)と、見るからに自分に自信がなさげで大人しくて1年生の時からクラスメイトだったという星崎かれん(女子十六番)から嫌がらせを受けていた室町古都美(女子十八番)にも声を掛け、1つのグループを作った(奈良橋智子(女子十一番)にも声を掛けても良かったのかもしれないが、彼女の頭の良さは知っていたのでやめておいた。頭の良い人間は厄介だ)。


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