10:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/01(水) 20:41:13.85 ID:mMrPH74Do
「そうだ、Pはどこに行きたい?」
二人の笑顔を見て俺も気を許し始めた頃合い、小さく盛られた自分の分の料理を平らげた泉が突然俺に訊ねてきた。
「どこに行きたい、って言われてもなあ」
勿論、今日の予定の話である。
俺は咄嗟に起床直後の事を思い出す。
すると、休日だから出かけようと思って入るものの、肝心の場所については全く考えていないことに気づいた。
これがスカウトだったら行きたい場所などどんどん出てくるのだが、自分が個人的にいきたい場所となるとすぐには思いつかないのであった。
「はいはーい! 私は遊園地にいきたいでぇす!」
「いやいや、いきなりすぎるわ……」
手を挙げるさくらに、亜子がため息を吐いてツッコミを入れる。
テレビでもよく見る光景だ。
それは、彼女たちの行動がテレビのディスプレイを通しても変わっていないことの証であった。
「そっか……じゃあ、家で休もっか」
苦笑いしながら、泉が一つ漏らす。
彼女の中では色んなところに行って気分転換をしてもらおう、という考えがあったのかもしれない。
それは大体の人が取りうる方策だし、出かけて気分転換をすることにきっと間違いはないだろう。
しかし、中にはプライベートの過ごし方がわからない人間だって居るものだ。
それが俺であるという事実には微かに悲しみを覚えるが、さしあたって今考えるべきはそれではない。
食器を片付け始める泉の俯いた顔を眺めていると、ふと一つだけ予定が浮かんだのだ。
「――ああ、そうだ。日用品の買い物でもしたいかな」
……なんともロマンのない予定である。
しかし、存外彼女たちの食いつきは悪いものではなかった。
「日用品かー。安心してや、Pちゃん。安い物知ってるから!」
彼女特有というべきか個性というべきか、アイドルに似つかわしくないような節約思考を発揮する亜子は、テレビの前に置いている小さなテーブルから来たばかりのチラシを取り出して、安いと思しき紙を絞り始めた。
何も今始めなくても、と思うが、それが彼女なりの気遣いなのかもしれない。
「ふふ、日用品か。何だかPらしいね。……じゃあ、食べ終わったらにする?」
次第にさくらと亜子でチラシを眺めあって方や値段を見、方やおいしいものを見つけるよくわからない状況になっている最中、泉は微笑みながら、俺に問いかけた。
……表情が硬かった日が随分と遠い昔のように感じる。
変わり果ててアイドルとなった泉を含め三人のそれぞれの笑顔を見ながら、俺は長めの朝食を摂ることとなった。
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