11:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/01(水) 20:43:58.45 ID:mMrPH74Do
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がー、がー、というタイヤの摩擦音から開放されると、すぐさまひんやりとした心地良い空気と愉快なミュージック、そして雑多な人声に包まれた。
――首都郊外にあるショッピングモール。
自宅のアパートに泊めてある、場違いな真新しい車に乗ってここを訪れた俺達は、早速入り口近くの食料品売場にやってきていた。
このショッピングモールは全国に展開しており、入店しているテナントも全国的に有名なあらゆるブランドもあれば一風変わった趣味色の強いテナントもあるなど、おおよそ休日スポットに相応しい総合ショッピング施設である。
今日は平日ながら朝から多くの人がここに集い、どのテナントもそこそこ賑わっているようだった。
「東京から少し離れても、人はいっぱいだね」
帽子を深くかぶった隣の泉が、ふと見上げるようにして俺に振り向いた。
「まあな。どこにだって人はいるんだから不思議じゃないさ」
彼女の手には赤色のポストイットが握られており、そこには泉の文字で必要な物がいくつか書かれていた。
その紙は俺が普段仕事にも使う物で、パソコンまわりから飛び出すのは大層珍しい。
「あの時のライブも、どこから来たーって感じやったもんな」
泉と俺の間から亜子が顔を出す。
トレードマークのメガネを外し、頭には野球帽を被っているその姿は一見亜子とは思えないぐらいであるが、そこから生まれる笑顔の独特さは消せず、にひひ、と白い歯を見せるその表情は甚く安心感を覚えさせてくれた。
「みぃんな楽しく、できましたっ」
続いてさくらも泉の手を抱いて飛び出てくる。
「さ、さくら……もう、いきなりやめてってば」
「えっへへ、ごめんね〜」
突然の事に驚きながらも、泉は苦笑してその手を抜けだそうとはしなかった。
「ほらPちゃん、遊ぶんもいいけどまずはあっちにいくでー!」
店内の至る所に吊るされた案内表示板を指さすと、亜子が俺の手を取って前に歩き出し、つられるようにして俺も前に出る。
どうやら買い物前の遊びが過ぎたらしい。
時は金なり、と言うべきか、もしくは安売り商品の売り切れを危惧したか、亜子はやる気いっぱいの姿勢で迷うこと無く歩みを進めていた。
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