12:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/01(水) 20:46:25.41 ID:mMrPH74Do
出遅れた泉とさくらは笑って謝りつつ、俺達の後を追っている。
この雰囲気が、最近ではどことなく好きになっていた。
適度な近さ。ずっと独り身で仕事をしていた俺にとって、彼女たちの担当というのはある意味賃金以上の何かなのかもしれない、と引きつられながら俺はふと思った。
「えーと、ハンガーと、洗剤と…あ、歯磨き粉安い」
日用品コーナーに進めば、そこはもう亜子の独壇場である。
平常時の値段など覚えていない俺から見れば驚異的な記憶力で、今がどの程度のラインなのか的確に見極めて教えてくれる。
泉の手に握られたメモに書いてある商品は勿論、あるといい物で安い物は度々俺に薦めてくるのだから、彼女はセール販売員か何かだろうか、と笑ってしまう。
「ねえねえプロデューサーさん、これ便利ですよぉ!」
さくらは便利商品、いわゆる時短アイテムとも言うべきか、そんなアイデアが勝利して商品化されたワイパーを持ってきて見せてくる。
確か、というか確実に今日亜子が握っていた物をさくらも見ていたはずなのだが……。
「まあ、それも買っとくか」
「……じゃあ、これはどうかな」
えへへ、とにこやかに微笑むさくらを他所に、今度は泉がきょろきょろと周りを見渡して何かを見つけたのか少し離れると、手袋型のスポンジを持ってくる。
「む、そうきたか。ならPちゃん、こんなんどう!?」
使い方について解説を聞いている間に亜子までも似たような事をしてきた。
どれもこれもなるほど、と思わせる便利なものばかりで、比較的手間を掛けることを嫌う俺は勧められた商品をカートに入れていく。
しかし、どんな便利な商品もちゃんと使えば、の話なのだが、それは置いておくとしようか。
「あ、こっちにジュースがあるよ、イズミーン!」
ひと通り日用品コーナーを物色し終わると、今度はその先にふと見つけた飲料水コーナーにさくらが踊るように進んでいった。
まるで子供だ、と思ってしまうが、実際彼女たちは子供なのだから別段おかしなことではない。
どちらかといえばおかしなのは、子供に大人のドレスを着せて働かせる俺の方だろう。
いつでも純粋に楽しく生きるさくらがよりいっそう素直に居られるのなら、こんな時間も良いものだ。
「こら、そっちは流石に目的じゃ――」
「いや、いいよ」
慌てて制止させようと動き出す泉の肩を掴んで引き止める。
こちらを振り返った泉は、少し困った顔をしていた。
「買い物って案外こういうものじゃないか? ……ほら、泉も美味しそうなものあったら持ってきていいぞ」
本音を言えば既にカートにはメモに記載された物以外の商品がいくつか混じってしまっているので、もはやそんなものはあってないようなものであるのだが。
「……じゃあ行く」
内心泉もそういうった事がしたかったのかもしれない。普段からさくらの性格を羨んでいた泉ならあり得ない話でもない。
「二人とも元気やねー。Pちゃんと一緒に出かけられんのがよっぽど嬉しいんかな?」
後ろ姿のまま角を抜けていった二人と他所に、隣に居る亜子がにひ、と笑ってこちらを見た。
「俺と出かけてもしょうがないだろう」
これがデートとかいう名義のものなら別だっただろうに、生憎彼女たちとはそのような爛れた関係ではない。
そう言ってカート押す手を緩めて惰性で進む俺に、亜子は俺の腕をこつん、と叩いてきた。
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