20:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/01(水) 21:00:21.23 ID:mMrPH74Do
しかし、時は突然に変化の軌道を描く。
――なあ、Pちゃん。成長ってなんやと思う?
おぼつかない動きで包丁を操るさくらを他所に、徐々に熱されつつあるフライパンの表面を眺めながら亜子はふと呟いたのだ。
そのフライパンには油がひかれており、時期に肉や野菜を炒める場となるだろう。
それまでの待機時間に、突拍子ではあるが俺は少し考えてしまう。
成長とは、辞書的に述べるならば生物や物事が発達し大きくなる事である。
子供がやがて大人になることも成長だし、ニューウェーブのファンが増えていっている事も成長と呼べるだろう。
しかし、亜子の横顔に見える瞳には、そんな単色化された意識は映っていなかった。
何を以て成長と言う?
単純が故の複雑さが、この言葉には含まれているような気がした。
「そうだな……自立する事、とか?」
至極単純な回答であり、それが間違いだとは思っていない。
人に限らず、全ての動静物は生を為せば死を迎える。
その長い命の中で、一番発達した時点までを成長と言い、またそこから死へと向かうまでを老化と言う。小学生や中学生でもごく当たり前に習うような事だ。
加えて、俺という立場の意味も加味してみる。
成長ということは、俺の年齢からすればあまり使われない言葉である。
無論、それは身体を指して使う場合であり、プロデューサーという職業においてはこの言葉ほど身近な物はない。
例えば俺自身。
一年目、初めてこの業界に飛び込んだその年は散々であった。
営業先からは無視され、怒られ、呆れられ、それでも行くしか無くて、もういっその事死んでしまえたらどれだけ楽だっただろうか、とすら思えるような毎日であった。
しかし、そんな俺を事務所の皆は支えてくれたのだ。
本気で心配してくれる子もいれば発破をかけてくる子もいるし、各々の持っている知識で改善できないか模索してくれる子も居た。
それぞれがそれぞれ頑張ってくれて……自分のことすらまだまだぐらついた土台の上であるにも関わらず、俺を助けてくれたのである。
だから、今俺はこうしてここに立っているのだ。
それは間違いなく成長と言えるし、開花とも言えるだろう。
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