過去ログ - 泉「未来へのテトラード」
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3:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/01(水) 20:29:27.69 ID:mMrPH74Do

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 ――遡れば、おおよそニ週間前ぐらいだろうか。
 おおよそ忘れることなどできないであろう、その日は大きめのライブがある日だった。

 ドームで、円状に配置されたライブステージにて代わる代わる舞いながらパフォーマンスをする三人のアイドル。
 次の世代への新たな波、ニューウェーブのユニットライブであった。

 悔しくもまだ日本を代表するユニットと呼べる知名度は誇っていないが、着実にファンを増やし、新進気鋭、今後に成長の余地が見える彼女らは期待されていると言えるだろう。
 結局、いつもより大きなライブ会場でもいかんなく力を、それぞれの個性を発揮して存分にライブを盛り上げ成功に導いたのだが、問題はその後である。


 ――久しぶりにゆっくり休むといい。
 ライブが終わり興奮冷めやらぬ中、用意された控え室に戻ると歓喜に湧く彼女らを自由にさせつつも、俺はひとつ言い放った。

 実を言うと、ここ最近に限っては、彼女らに休みらしい休みは殆ど無かった。
 それも当然のはずで、この日という一大イベントの前とあってはひっきりなしに練習の時間が設けられ、日夜特訓の毎日だったからである。
 尤も、こういう日を設定されては彼女たちも休もうにも休めないのだろうけども。

 ともかく、そういった練習のかいあって成功という結果に終われたのだから、ここらで一つ思いっきり羽根を伸ばしても構わないだろう、というのが俺の考えだった。
 事実、練習の最中弱音を吐く姿こそなかったものの、流石に平常の姿では居られず、心なしか疲労の色が時折垣間見られたのである。

「ほんとーですかぁ!?」
 鮮やかな少女めいた桃色の衣装を身にまとった少女、村松さくらはいち早く俺の声に反応した。
 三人でそれぞれタイプが異なるこのニューウェーブの中で、底抜けの天真爛漫さがアピールポイントのさくらは、ライブ中と変わらず笑顔で、隣同士の少女に声をかける。

 その内、綺麗なロングヘアの少女は訝しげに俺に振り向いて訊ね返した。
「……いいのかな、もらっても」
 歓喜の輪の中からでた静かな声色の、俺は心中苦笑してしまう。

 さくらと比べると滅法落ち着いているように見えるこの少女は大石泉という。ユニットの芯的存在で、いつも冷静で静かでありながらも、心の奥に宿る熱い心は歌声にしっかりと宿り、ステージでも他の二人を引っ張る無意識のリーダーである。
「ええねんて。Pちゃんがそうゆーてるんやし!」

 一方、そんな二人とはまた違った雰囲気の少女は土屋亜子である。二人に比べても明らかに違う、一見雰囲気を壊しかねない要素を持つ彼女だが、ライブやテレビ番組の出演時では周りを見ながら適時必要な役回りをしっかりこなせる、機転の効くタイプのアイドルだ。
 泉は真面目だがそれに突出しすぎる面があり、亜子はそれをフォローすることも出来れば、時折場違いな方向を進んでしまうさくらを誘導する事もできる、影のリーダーと言えよう。

 たった三人だが、それでも豊かな個性が集まるユニットは常に空中分解の危険性を孕んでいる。
 しかし、それでもこうして続けていられるのは一人ひとりがちゃんとアイドルの意識を保てているからでもあるし、三人同士で真に理解しあっているからなのだろう。

 普通、ユニットを組めば大体役割分担を決めるのが当たり前なのだが、こと彼女達においては自然に任せているのはそのせいだ。
 俺が割って入る必要性がないほど、彼女たちは仲良しなのである。




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