4:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/01(水) 20:32:19.82 ID:mMrPH74Do
さて話を戻すと、こうして無事ライブが終わったのだから休みを設けよう、という俺の考えはきっちりと彼女たちに浸透しているようであった。
口々に何をしよう、どこへ行こう、そういった話題を巡らせている。
「そういえば、休みはどのくらいなん?」
その時、ふと思ったのか亜子がこちらを向いて訊ねてきた。
ん、と一つ間を置くと、俺はしばし考える。
いや、決して考えていなかった訳ではないが、休みを与えようという考え以外は別段重要視していなかったのである。
俺の務めるプロダクションはアイドルの数もそこそこ居る上に、誰が稼ぎ頭であると決める必要がないほど、それぞれ頑張ってくれている。
故に、必要であれば一週間ぐらい見積もっても罰は当たるまい。
……それ以前に、上に判断を仰いでいないのだから俺も無策に違いないのだが。
まあ、彼女たちを担当しているのは俺なのだから、上も許してくれるはずだ。
現にこの後の仕事は主にライブ後に発売するライブ映像をまとめたDVDの宣伝にまつわるものばかりだから、それをきっちりこなせば後は空けようと思えば空けられるのである。
それは、俺が彼女の仕事を選り好みできる立場にまでなっていることに他ならなかった。
「どのくらいほしい?」
ここで、俺はあえて意地悪な質問をしてみる。
仕事の重要性を知っている彼女たちだから、一週間も二週間も休みを取るのは憚られるのだろうか。なんてことはない、ちょっとした冗談の強い訊き方である。
しかし、少し三人で話し合った後に泉が放った答えは、存外きっぱりとしたものであった。
「……うん、三日がいいな」
「三日だって? ……少なくないか?」
思わず俺も彼女の言葉に反抗する。
自分で訊いておいて何だが、このがんばりに対して三日というのは少し謙虚すぎるというのではないだろうか。
そんな俺の視線を物ともせず、泉は続ける。
「ううん、大丈夫。今頑張らないと駄目だし、何よりPが上手く調整してくれたから、そんなに疲れてる訳じゃないよ」
そういってくすりと微笑む彼女には、不思議とライブ後の雰囲気はなかった。
取り繕っているのだろうかと隣のさくらを見ても、彼女と同様の表情である。
どういう訳なのだろう、という不自然な俺の視線を感じたのか、亜子が一歩前に出てくると不意に俺の肩を叩いた。
「ほんと、わかってないなー。アタシらはPちゃんが担当やったから、好きにできるんやで?」
その言葉に、俺は無意識にと後ろの二人を見る。
二人とも、それぞれ向きは違えども笑顔を見せていた。
「……一週間って言われてもオーケーするつもりだったけど、本当に三日でいいのか?」
「大丈夫でぇす!」
念のため訊き返した俺の声に、ブイサインをつきだしてさくらがにこりと笑った。
結局、彼女らの統一された意見に従って休みは三日間という事になった。
これから一週間程度はテレビに出ずっぱりになることは既に確定していたので、それが落ち着いたおよそ二週間後、改めて日時を指定して終日オフを宣言することとなったのである。
それにしても、あの短時間の相談でどうしてすぐに三日という結論を導き出したのだろうか。
軽く推測してみると、やはり仲の良い三人だから一緒にどこかへ二泊三日で旅行に出かけるのかもしれない。
顔の売れているアイドルだから、過度の露出を控えるように、とだけは言っておこうか。
彼女たちの輝かしい笑顔をそこそこに、退出の準備をする俺なのであった。
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