7:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/01(水) 20:36:35.07 ID:mMrPH74Do
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カチャリ、と食器と食器が接触する小気味よい音が部屋に響き渡る。
それも一つではなく、二つも三つもであるのだから、それが珍しい光景であるのは自分自身よくわかっていた。
午前九時十五分。
快適ともいうべき起床からまだ十五分という短い時間の内に、俺は知らず知らず疲労を蓄積させていた……否、嘆息をまき散らしていた、と言うべきだろうか。
この部屋には俺一人しか住んでいないのだが、時折訪れるゲストのためにテーブルだけは四人がけのものを用意している。
一人暮らしで贅沢と思われるかもしれないがそんなことはなく、これは事務所からプレゼントされたものだし、何より狭い部屋にこの四角いテーブルはとんでもなく邪魔であった。
隣に座るさくらがフォークを可愛く握ってハムとレタスを同時に口に運ぶ。シャキ、という音が新鮮な朝をより演出していた。
泉は泉でテーブルに常備している海苔を茶碗の中のご飯に器用に巻きつけて、小さく包んで食べていた。
「……あはは、なんかごめんな、Pちゃん」
思い思いに朝食を楽しむ最中、不意に亜子がお茶を飲んでから一つ呟く。
――謝罪という行為をする理由を探るためには、少しだけ過去に戻らなければなるまい。
起床直後、突然出会った俺と三人。
その諸元を確認するために電話を掛けた相手とは、我がプロダクション唯一の事務員こと千川ちひろであった。
事務員と言いながらも並々ならぬ美貌を持っており、運命の歯車が少しずれていれば彼女こそこの事務所のアイドルになっていたのではないかと思う程だ。
では何故ここで彼女に発信したかというと、原因は彼女の立場にある。
そもそもこのアパートは事務所が所有しているもので、千川ちひろはそこの管理も兼ねているのだ。
一応衛生や設備の維持管理は別の人に委託しているのだが、名義的な管理人は千川ちひろとなっているのである。
つまり、彼女にとっては社員の部屋の鍵など無意味に等しいと言っても過言ではない。
無論それらは大事な理由、つまり非常事態のために持っているのであって、決して悪用するために握っているのではないのだが、今回の件に関しては何とも言いがたい理由であった。
「普段お世話になっているプロデューサーさんのために何かしたいって、あの子達がいってたんです」
電話口から聞こえた彼女の言葉は、からかうのでもなければ真摯な声でもない、朗らかな声色であった。
まるで一仕事終えたかのような明朗さ。
だがこちらからしてみれば、とんでもないサプライズである。
「だからって、わざわざ秘密にするこたないじゃないですか……」
そんな精一杯の俺の抵抗に、彼女はふふ、と笑った。
「最近激務でしたし、それでいて同じことの繰り返しの日々でしたからね。プロデューサーさんも何だかつまらなそうな顔してたの、気づいてます?」
「え?」
携帯電話を持っていない方の手を思わず頬に押し当てる。
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