8:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/01(水) 20:38:14.66 ID:mMrPH74Do
まさか、そんなはずは。
「他の子の中でも勘の良い子は心配していたぐらいですから、相当でしたよ。それでまあ、ちょっとしたサプライズを、ですねっ」
少し静まり返った調子を語尾では上げて朗らかに彼女は喋る。
……どうやら、いつの間にか俺の表情筋は垂れ落ちていたらしい。
決してそんなことを意識していたはずではないのだが、自分でも気づかない位だ、ここはそれに気づいた子を褒めるべきなのかもしれない。
つまらない所で失敗してしまったものだ、と一人心中嘆息しつつも、電話口に意識を戻す。
「……とにかく、この状況はちひろさんがやったんですね?」
話を振り返らせると、ちひろさんはすぐに肯定した。
「はい。他にも行きたがる子は居ましたけど、ここはプロデューサーの愛娘にだけ絞らせて頂きました」
「愛娘とはなんですか、愛娘とは」
あいにく血の繋がった子供などこの世に存在していない。
まあ、彼女の言う通り、二人三脚どころか四人五脚で歩んできたニューウェーブの子達に対してはこと娘と言っても差し支えない程に親しみを感じているのだが。
「どうせプロデューサーさんは休日にどこかに行こうにも仕事のことを考えちゃって休みらしい休みができなさそうですし、ここは騙されたと思ってあの子たちと一緒にプライベートを楽しんでみたらどうでしょう……ね?」
残念ながら、ぐうの音も出ない程には正論である。
たった十数分前、出かける折には仕事の事を考えていたのだから、俺の頭もいよいよ染まってきているな、と浅く息を吐いた。
そして語尾で念を押すあたり、彼女の予測にも自信があるのだろう。
思い通りになるのは中々受け入れがたいのだが、ここは彼女に従うとしよう。
何より、ニューウェーブの子達が心配してくれたのだから、それを受け入れることに抵抗などあるはずもない。
「――今日一日だけですけど、楽しんでくださいね。それでは失礼します」
そう言い残して、声が無機質な電子音に切り替わる。
恐らく彼女は今日も仕事だ。
今までの勤務状況を鑑みるに、彼女こそ休みが必要なのだろうと思うのだが、それを考えるのはまた後にすべきか。
巡り巡って戻ってきた意識が、インスタントの味噌汁の味を認識した。
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