6: ◆ukweaVAfH6[saga]
2014/02/04(火) 21:34:47.01 ID:bTme5qlW0
〜始まりのラプソディー 第一楽章 Op.1〜
ラプソディーという楽曲の定義は恐ろしく適当だと僕は思う。ワルツのように三拍子である必要もなければ、ソナタのように楽章の必要もない。結局のところ必要なのは”叙情性”と”民族性。この二つだけだ、というのは決して僕の独断ではなく、世の中の一般的な解釈である。
そんな暴力的な解釈で定義されるラプソディーというジャンルは、とてつもなく便利だった。テンポも拍子も更には楽器も何一つ定めがない。世の中一般で言われるクラシック音楽の中では最も自由だと言っていいだろう。
7: ◆ukweaVAfH6[saga]
2014/02/04(火) 21:35:12.72 ID:bTme5qlW0
「きみはとてもピアノが上手だ。素晴らしいと思う。私よりよほど早くイスラメイを弾けるだろうし、ミスタッチも少ないだろう」
「唐突に何でしょう?」
「しかし、君の演奏は機械製だ。そこには何の想いもない」
8: ◆ukweaVAfH6[saga]
2014/02/04(火) 21:35:58.26 ID:bTme5qlW0
そこで、私はちょっと旅に出ようと思う。うんと長い時間……そうだな、1年程」
「あてはあるんですか?」
「……君には1年間シンフォニーを任せよう。君の自由にしてくれていい」
9: ◆ukweaVAfH6[saga]
2014/02/04(火) 21:42:09.25 ID:bTme5qlW0
>>6僕自信→僕自身
……そうして僕の世界一残念な師匠は旅立ってしまったのだった。僕に”喫茶店シンフォニー”を押し付けて……。
「はあ……」
10: ◆ukweaVAfH6[saga]
2014/02/04(火) 21:51:10.59 ID:bTme5qlW0
しかし、自分自身で魅力と言っておきながらあくまでこの魅力は、演奏者にとってのもので、喫茶店を訪れるお客さんにとっては魅力どころか邪魔なオブジェでしか無いような気がする。それこそ、演奏する人間は師匠曰く、”機械”とのことだし。
「……思い出したら腹立ってきた」
師匠はいつもそうだ。僕にとって都合が悪いことをしたいときには、僕の欠点を指摘して強引に自分の主張を通してしまう。僕の欠点を直すために必要だとかご丁寧に言い訳まで付けて。
11: ◆ukweaVAfH6[saga]
2014/02/04(火) 21:52:24.03 ID:bTme5qlW0
さて、短くて申し訳ないですが、初回はこんな感じです。
時間が少々開くと思いますが、暇な時に見ていただけると喜びます。
では失礼します。
12: ◆ukweaVAfH6[sage]
2014/02/05(水) 08:21:11.68 ID:VKFFUCed0
おはようございます。
次回投下は週明けになる予定です。よろしくお願い致します。
13: ◆ukweaVAfH6
2014/02/09(日) 12:27:43.42 ID:HH7rzBHw0
さて、週明けと言いましたが思いの外時間ができまして、それなりに書けましたので
投稿してまいります。よろしくお願いいたします。
14: ◆ukweaVAfH6
2014/02/09(日) 12:28:36.71 ID:HH7rzBHw0
〜悪魔のラプソディー Op.2〜
僕が喫茶店シンフォニーを勝手に喫茶店ラプソディーへと改造してから早3日、いまだに僕はコーヒーを淹れていない。いくら素人の僕でもこの店が喫茶店として機能していないことは簡単に分かった。必須要素であるお客がいないのだから。
しかし、お客が来ないおかげで黙々とピアノの練習ができたのは、不幸中の幸いなのかもしれない。雑用を発注する師匠も居ないわけだし……。もしかしたら、師匠は『自分がいないほうが僕の練習時間が増えて、成長に繋がる!』なんて殊勝な考えに基づいて、旅に出たのかもしれない……。あの残念な師匠のことだから、万に一つもあり得ないけれど。
15: ◆ukweaVAfH6
2014/02/09(日) 12:29:03.77 ID:HH7rzBHw0
「ふぅ……」
もはや開店後の日課となったハノンを弾きとおすと、時計の針は一回りとまではいかないものの、四分の三程度進んでいた。単調な練習曲だからつい飽きてしまいがちになるけれど、一日に一度は弾かないと腕がなまってしまうような気がしてならない。だからこそ僕は一日のルーティーンの中にこの練習曲を組み込むようにしている。
「……よし」
16: ◆ukweaVAfH6
2014/02/09(日) 12:29:32.44 ID:HH7rzBHw0
2分を切るような短い曲だけれど、少し速いスピードで弾きこなした時の爽快感が好きで、演奏者としてはとても好きな楽曲だ。スピードを保ちながらも音の粒が潰れてしまわないように心掛ける。僕の弾いた一音一音を切り取っても、喫茶店の隅々まで響くように。
「……」
会心の出来とは言わないものの、今日の調子はそれなりのようだ。ミスタッチが無いのは当然としても、リズムのぶれも音のぶれも少なかったのではないだろうか……。
31Res/18.40 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。