過去ログ - まこ「キングクリムゾン!」
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1:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/02/09(日) 14:14:58.07 ID:L0TIiBMm0
私の祖父は、私に麻雀を教えてくれた。
その時のことは全く覚えていない。
麻雀を覚えた時のことを、私は覚えていない。

ただ、店主である祖父が客の中にまじって、
卓を囲んでいるのを、延々と、ただじーっと見ていたらしい。

そんな私を祖父は抱えあげて、
自分の膝の上に座らせて、そのまま麻雀を続けた。
祖父の膝の上では、祖父の心臓の音が聞こえた。
たばこを何十年も一日一箱吸った口からただよう、祖父の息のにおいや、
その時見た盤面や人々の表情や声は、はっきりと覚えている。

私が高校に入って、部員が一人しかいない麻雀部に入ったのは、
家が元雀荘だからというよりは、
この経験に因るものが大きいと思う。

麻雀部の部室を初めて訪れたときのことだ。
ノックをして、失礼しますと言ってからドアを押すと、
彼女は、広くて天井の高い部屋に、
ぽつんと置かれた自動雀卓に一人で座っていた。


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2:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/02/09(日) 14:16:16.55 ID:L0TIiBMm0
彼女は雀卓からドアのほうが見える席に座っていたのに、
私に気づかなかったようだった。
ただ、自動雀卓の真ん中にある、
ふたつのサイコロが閉じ込められている小さな部屋を見つめていた。

以下略



3:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/02/09(日) 14:17:47.06 ID:L0TIiBMm0
その年は結局私以外の部員は入ってこなかった。

「ねえ、まこはコンタクトにしないの?」
久はパソコンに向かって、肘をついてインターネットをしながら、
気の抜けた声でつぶやくように言った。
以下略



4:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/02/09(日) 14:17:52.22 ID:HRvxvptlo
なんやねん


5:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/02/09(日) 14:18:37.48 ID:L0TIiBMm0
私が部室で、高校に入ってはじめての中間テストの勉強をしていると、
久が突然、
「雀荘に行くわよ、まこ!」
と言い出した。

以下略



6:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/02/09(日) 14:19:18.30 ID:L0TIiBMm0
その日の夕方、久は予告通り店に来た。

私が自分の部屋で勉強をしていたところに
(店の手伝いは休ませてもらっていた)、
母が「お友達が来たわよ」と声をかけてきて、
以下略



7:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/02/09(日) 14:20:15.90 ID:L0TIiBMm0
久は『活動』と称して、うちの店でバイトを始めた。
私は髪をストレートにしてコンタクトをつけ始めた。
まっすぐに伸びた髪の毛は肩まで届いた。
外は梅雨独特のもったりした、
虫やカビを活発にさせる雨が降っていて、
以下略



8:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/02/09(日) 14:21:27.17 ID:L0TIiBMm0
夏休みの前に、せっかくストレートにした髪を元に戻した。
この髪型が久とかぶっていると思ってしまって
(今思えば、彼女の髪には少し癖があるから、
 かぶってなんてなかったのだが)
その据わりの悪い感じに耐えられなくなったからだ。
以下略



9:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/02/09(日) 14:22:12.25 ID:L0TIiBMm0
久はがビーチチェアに座っているときは、
私もよくベランダに出て、
二人で話をしたり、ただ黙って風を浴びたりした。

しかし、その風がちょうどよく涼しくなった頃には、
以下略



10:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/02/09(日) 14:23:13.79 ID:L0TIiBMm0
後に、久は本当にその『権力』を使って、
和と優希をこの学校、そしてこの部に入れ、
他にもいろいろなことに暗躍してしまうのだが、
久が「まこ、推薦人お願いね」と言ってビーチチェアの上に立ち上がり、
足を滑らせて転び、屋根をそのままうつ伏せに滑っていって、
以下略



11:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/02/09(日) 14:24:04.75 ID:L0TIiBMm0
翌日、久は演説会で推薦人である私が読む原稿を書いてきた。

『1年の染谷まこです。
 私は竹井久さんを学生議会長に推薦いたします。

以下略



12:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/02/09(日) 14:25:05.97 ID:L0TIiBMm0
家に帰って、私は自分で、推薦人演説の原稿を書いてみることにした。

「竹井さんは」と書き出したが、
他人行儀な気がして、それを消して「久は」と書きなおした。

以下略



13:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/02/09(日) 14:26:03.88 ID:L0TIiBMm0
前に述べたとおり、久は学生議会長に選ばれた。

久は原稿を一切用意せずに演説に臨んだ。つまり勢いで押した。
私はおとなしく、久の用意した原稿を丁寧に読んだ。
この対比を、久は計算していたのだ。
以下略



14:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/02/09(日) 14:27:05.04 ID:L0TIiBMm0
久が忙しくなって、部活になかなか出られなくなっても、
私は毎日なんとなく部室を開けてそこで過ごした。

ベッドに寝転がって雀卓の方を見ると、
そこに一年前の久が座っているような気がした。
以下略



15:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/02/09(日) 14:28:04.04 ID:L0TIiBMm0
「まこー、いないのー?」
「まこー」
「ああ、ベッドにいたんだ」

久がとすんとベッドに腰掛けて、マットレスのスプリングが何回か揺れて止まった。
以下略



16:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/02/09(日) 14:29:16.77 ID:L0TIiBMm0
和と優希(と咲)が入ってくる入学式の前日、
久と私は部室で紅茶を飲んでいた。
久は学生議会の何かがあって、
私も入学式の準備の何かで学校にたまたま来ていて、
終わった後なんとなく部室に来てお茶を飲んでいた。
以下略



17:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/02/09(日) 14:30:06.52 ID:L0TIiBMm0
「ねえ、まこ。

 一年前にまこがこの部に来てくれなかったら。
 私はこの部を続けていられてたかどうかわからないわ。
 1年生の1年間、ずっと、誰かが来るのを待っていた。
以下略



18:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/02/09(日) 14:31:04.20 ID:L0TIiBMm0

「じゃけど…、別にわし以外の部員が入ってきたわけじゃないし、
 結局予選にすら出られんかったし、練習もできたわけでもないし…」

「予選っていうか、インハイは今年出るからいいのよ。
以下略



19:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/02/09(日) 14:31:52.53 ID:L0TIiBMm0

「じゃけど…、別にわし以外の部員が入ってきたわけじゃないし、
 結局予選にすら出られんかったし、練習もできたわけでもないし…」

「予選っていうか、インハイは今年出るからいいのよ。
以下略



20:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/02/09(日) 14:33:31.96 ID:L0TIiBMm0
みじかいですが終わりです。
VIPに一回投下失敗しちゃって…、
その際はご迷惑おかけしました。申し訳ないです。


21:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/02/09(日) 14:41:38.98 ID:NiBdufdO0

最後がスレタイに繋がるのか


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