182: ◆K27FRRVqmQ[saga]
2014/08/03(日) 09:48:42.79 ID:bXxSq3Ge0
目を開くと、風がそよいだ。
柔らかい空気を感じて、何故だか、季節が巡ってまた春がきた、と思った。
新しい季節に、新しい大切な風景が、きっとまた生まれる。
だから。
183: ◆K27FRRVqmQ[saga]
2014/08/03(日) 09:50:00.75 ID:bXxSq3Ge0
なずな「乃莉ちゃん、大好き」
184: ◆K27FRRVqmQ[saga]
2014/08/03(日) 09:54:39.96 ID:bXxSq3Ge0
乃莉「……なずな」
なずな「変かもしれないけどね、私、ずっと……」
乃莉「ううん」
185: ◆K27FRRVqmQ[saga]
2014/08/03(日) 10:13:48.45 ID:bXxSq3Ge0
突然、私を抱きしめる乃莉ちゃんの腕が緩んだ。
私が顔を上げるよりも早く、乃莉ちゃんが私の手を取った。
乃莉「なずな。こっち」
186: ◆K27FRRVqmQ[saga]
2014/08/03(日) 10:20:48.00 ID:bXxSq3Ge0
一面に生い茂るクローバーの緑の中に、たったひとつ、白く可憐な花が咲いていた。
乃莉「なずながいてくれるからだよ」
187: ◆K27FRRVqmQ[saga]
2014/08/03(日) 10:23:43.01 ID:bXxSq3Ge0
乃莉ちゃんはそういったきり、何も言わずに私をずっと見つめていた。
私も言葉が見つからず、だんだんと目頭が熱くなるのを感じながら乃莉ちゃんを見つめ返す。
風が二人の間を通り抜けていった。
もうすっかり暖かくなった風は私の頬を優しく撫でていき、目の奥に溜まった涙を乾かしてくれる。
188: ◆K27FRRVqmQ[saga]
2014/08/03(日) 10:24:23.65 ID:bXxSq3Ge0
乃莉ちゃんが急に手を伸ばした。
そちらを振り向くと、風に吹かれて飛んでいく鮮やかな緑色が見えた。
私はようやく手に何も持っていないことに気づいた。乃莉ちゃんから貰った四葉のクローバーが風で飛ばされちゃったみたい。
駈け出そうとする乃莉ちゃんの腕を思わず掴む。
189: ◆K27FRRVqmQ[saga]
2014/08/03(日) 10:27:06.42 ID:bXxSq3Ge0
飛ばされていった四葉は、一面のクローバーの中に消えて行った。
それはなんだか、いつか誰かがこの場所で幸運を捕まえることを待っているように思えた。
……私には、もう必要ないよね。
だって、ここにはもうこんなにも幸せがあるのだから。
乃莉ちゃんの目をまっすぐ見つめ、手を握る。
190: ◆K27FRRVqmQ[saga]
2014/08/03(日) 10:49:19.59 ID:bXxSq3Ge0
四月、私は高校2年生になった。
春の息遣いはますます濃くなり、そよ風は季節の色に輝いているよう。
私は1年間過ごしたひだまり荘を出て、今は家族と一緒に暮らしている。
不思議とひだまり荘での日々は遠い幸せな思い出のように思えて、それを懐かしむことはあっても寂しい気分になることはあまりない。
他にも学校のこととか、いろんなことが急激に変わって、毎日がすごく慌ただしくすぎていくけれど、
191: ◆K27FRRVqmQ[saga]
2014/08/03(日) 10:50:47.36 ID:bXxSq3Ge0
放課後
なずな「乃莉ちゃん、おまたせ」
乃莉「あ、なずな。結構遅かったけど、何かあったの?」
192: ◆K27FRRVqmQ[saga]
2014/08/03(日) 10:53:43.43 ID:bXxSq3Ge0
なずな「乃莉ちゃん」
乃莉「ん?」
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