過去ログ - モバP「見えた今に絶えぬ未来を」
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12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/22(火) 22:59:30.46 ID:dbLyof+Po


 だが、俺がわからないのはそこだ。
「翠のことを忘れた日なんて一度もない。掛け値なしにな。昨日の結果のことだって、本人も理解して切り替えてくれている」
 今日の昼の会話を脳裏に映す。
 酷く冷静で結果を受け止めた翠は、頑張ると答えて次回への意欲を示した。
 別に思い切りハンカチを噛みちぎって悔しがることだけが結果への態度ではないのだ、そういうタイプもいれば千秋のように徹底的に原因を追求するアイドルも居るし、表に出さないものの、心の内で静かに燃やすアイドルも居るものだ。

 それを画一化してどうこうとは言いたくない。俺自身翠の態度には少し違和感を抱いてしまったが、それも一つの形なのだと言える。

 声色を変えて返事をする俺の言葉に再度千秋が嘆息する。一体彼女の求める回答というものは何なのだろうか。
「だったら、少しはあの子の性格も知っておくべきよ。……ちひろさんもそう思わない?」
「えっ?」
 おろおろとしていた隣のちひろさんは急に話しかけられて戸惑いの声を上げた。
「……翠ちゃんの性格、ですか?」
 しかし千秋の言葉の意味は耳から頭に通じていたようで、少しの間考えこんでは降参する。

 水野翠の性格。
 少しばかり世間の一般常識というものからは乖離した一面があるものの、思いは真っ直ぐに、純粋に、ひたむきに努力する人間だ。
 千秋のようにステップアップのためにはいかなる状況や人物をも上手く利用して協力し合い己の力に変えようとするような広さはなく、自身の向上のために独立して鍛錬を続ける、内向きながらもストイックさを持っている。

 一応数年は共に仕事をこなしてきてある程度の性格は把握しているつもりだが、それを聞いてどういうつもりなのだろう、と首を僅かほど傾げた。
「……はあ」
 そんな中々答えの出ない俺の様子を見て千秋が観念したように首を振る。
「教えてくれ。翠がどうしたというんだ?」
 ここで会話のかくれんぼをしたところで実直な利益は得られそうにないと判断した俺が答えを急かすと、千秋ははぐらかすように息を漏らして答えた。

「四階入って左、一番奥、右側の部屋。……あの子は素直だけど、意外と頑固者なのよ。そしてそれを変えるのは多分あなたしか居ないわ。悔しいけどね」
「四階?」
 聞き慣れている単語だが、不用意に出てきたことに思わず尋ね返してしまう。





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