1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/05/03(土) 15:48:25.09 ID:wJvh996L0
寂しげに冷たい風が吹き抜ける小さな電気街。
普段は鉄橋の上を電車が走る音と、僅かにテレビの音が聞こえるだけだったが、今日は違った。
掠れてしまいそうなくらい力強い歌声と、華麗なギター裁きが奏でる心地よい音。
私は何故かその歌声に、その音に聴き入っていた。
「アタシの歌、聴いてくれたのかい?」
彼女は私にそう問い掛けた。
「あの…すみません」
私はその場をそそくさと離れようとした。
「いや、いいんだよ。よかったらもっと聴いていってくれないかな」
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/03(土) 15:58:01.00 ID:wJvh996L0
私はその場に留まり、彼女の歌を聴いていることにした。
力強いのに優しく語りかけるような歌声。
この曲は彼女が作ったわけではなく、既存のバンドの曲だが、彼女の声に合った雰囲気をかもし出している。
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2014/05/03(土) 16:03:41.35 ID:wJvh996L0
失礼な事を言ってしまっただろうか。急いで撤回しようとした矢先
「アンタ、面白いね」
彼女は微笑んでそう言った。
4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/03(土) 16:09:42.58 ID:wJvh996L0
その時、彼女は何かを見つけたかのように目を丸くしていた。
「アイドル…如月千早…?」
彼女の目線の先には、微かに音が聞こえるテレビ。そこに映っているのは私だった。
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2014/05/03(土) 16:16:54.43 ID:wJvh996L0
その後は彼女と別れてしまい、ゆっくりと話をすることもできなかった。
そういえば名前を聞くのを忘れていたが、あの場所に行けばきっとまた会えるだろう。
時は移ろいでその翌日。
6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/03(土) 16:26:48.26 ID:wJvh996L0
春香に連れられて来たそこは、昨日の寂れた電気街とは違う、綺麗で、活気のある街だった。
あっという間に目的の品を購入し、少し時間に余裕が出来たので、他の店も眺めることにした。
すると春香が何かを発見し、私を呼ぶ。
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2014/05/03(土) 16:35:16.00 ID:wJvh996L0
春香が足を引っ掛けたそれは、エレキギターのチューブだった。
アンプに接続されていて、試しに弾くことができるようになっていたらしい。
「あいたたた…」
8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/03(土) 16:41:45.70 ID:wJvh996L0
「はじめまして!いつもテレビで見てます!」
「はぁ…どうも」
私も春香も、ばれてしまっては仕方ない。と言わんばかりの態度で対応する。
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/03(土) 16:52:53.99 ID:wJvh996L0
途中、名前を名乗った気がしたが、聞き流していたせいか印象にも残らなかった。春香は聞いていたかもしれないので後で聞いてみよう。
「春香さんの『I Want』とか、千早さんの『目が逢う瞬間』とか大好きなんですよ」
「そうなんだ。なんか嬉しいなぁ…」
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/03(土) 16:58:41.82 ID:wJvh996L0
別れ際に、これからそこの広場でライブやるんです。
と言うので、見に行くことにした。
ライブというのは、先程言っていたバンドのライブだろう。
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/03(土) 17:03:19.23 ID:wJvh996L0
ユイの歌はお世辞にも上手いとは言えない、ひどいものだった。
ギターの演奏もよれていたが、歌うか弾くかのどちらかに専念すれば少しはマシになるだろうというレベルだ。
二曲の演奏のみのライブが終わると、私達は広場を後にした。
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/05/03(土) 17:04:26.30 ID:IUwTevBpo
ABとアイマスのクロスかな?
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/03(土) 17:18:56.39 ID:wJvh996L0
その後家路につくと、最寄り駅の改札を抜けたところで、見覚えのある人影が見えた。
彼女だ。
「あの…」
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/05/03(土) 18:41:56.50 ID:T8TX2oTXo
チューブ?真空管?
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/03(土) 21:49:11.20 ID:wJvh996L0
「そういえば私の名前まだ言ってなかったね。私は岩沢まさみ。よろしく」
こちらから聞かずとも名を名乗ってくれた。岩沢。岩沢さん…。
「あの、岩沢さん」
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/03(土) 21:56:12.57 ID:wJvh996L0
岩沢さんは、いつか自分の作った曲を世に出したいと言う。
「それじゃあ、今日はこの辺で」
「そうですね。二度も会っているのだから、また機会はあるでしょうし」
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/03(土) 22:03:56.82 ID:wJvh996L0
昨日と、一昨日とで岩沢さんとユイという二人の人物に出会っていた。
二人の姿や性格はまるで違っていたが、声を聞く度に、目を逢わせる度に、優の面影が重なっていたのだ。
そして今日もまた出会い、重なる。
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/03(土) 22:08:35.66 ID:wJvh996L0
岩沢さんは死んでいるという。
死んで生き返ったという。
正確には、死後の世界で成仏し、人生を一からやり直しているという。
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2014/05/03(土) 22:16:22.29 ID:wJvh996L0
何となく直感だけで言った。理由は説明できなかったが、想いだけは伝わったらしい。
「分かった。私も考えてみるから、あんまり悩まないでよ」
「ありがとう」
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/03(土) 22:21:54.50 ID:wJvh996L0
「歌えないのに曲をもらってどうするつもり?」
「歌います。必ず」
「そうは言っても今現在アンタの声は生きてないだろ?」
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/03(土) 22:26:25.92 ID:wJvh996L0
アタシが渡すのは曲だけだよ。と言い、楽譜を与えてくれた。
昨日完成したばかりだったらしい。
きっと私は春香達が歌声を取り戻した時に、昔の私と決別したと錯覚していたのだ。
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