過去ログ - 私にはだれにも言えない秘密があります。
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1: ◆XTaiiNXKpw
2014/05/08(木) 01:04:45.76 ID:5ztHGExv0
 もう夏に近づいていて、少し暑くなってきた時期。風が体育館の屋上で寝そべる少年の前髪を揺らす。イメージはジョンブリアン。新しいことを感じる度、その色を連想するのが少年の癖だった。


「せんぱーい!」


 覚醒と睡眠の微睡みの中、少女の少年を呼ぶ声が現実へと連れ戻す。屋上から顔を出し、グラウンドを見ると少女が犬のように手を振っていた。 日が沈みかけているところを見ると、今から部活なのだろう。少女の背中にはギターケースが見られた。

 いつも気難しい顔で、無口で。しかもここにきてまだ数ヶ月の少年にとって唯一の友人だった。出会いのきっかけはそれほど特別な物ではなく、ただ単純に自殺防止用に鍵のかかった校内では体育館の屋上が二人にとってのお気に入りの場所だっただけだ。
 初対面のとき、ちょうど少年の寝転がっていた場所で二人は顔を合わせた。肩に触れるかどうかのショートヘアーに中性的な顔立ちはこの場所から追い出すのをためらうには十分な理由だった。

 ただ、少年は少女と付き合いたいだとか、もっと仲良くなりとは思わなかった。今の関係がベストだと思ったからだ。
 だけれど。


「先輩、ここから一緒に落ちちゃえば私たちあっという間に死んじゃえるんですかね?」


 校舎のベランダから1メートル程度はなれた体育館の屋上に、少年が先に屋上へ行き、少女の手をとった時だった。彼女は極めて笑顔でそう吐き捨てた。


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2: ◆XTaiiNXKpw[sage saga]
2014/05/08(木) 01:07:29.56 ID:5ztHGExv0
 少年には正しいか誤っているのか、完全に見極める能力があった。この能力を手に入れたのは大学に入って間もないことだった。国公立の芸大に入学した数ヶ月後のこと。

 YesかNoかで答えることのできる問いに対しては100%答えがわかってしまう。これだけなら便利な道具程度にしか思わないだろうが、これはそういう浅さのものではなかった。人格、道徳。人ですら誤っているか正しいかわかるのだ。
 ぼんやりとその人にかかる靄の色で判別できてしまう。これに気づいたのは少年が能力を手に入れて三日後のこと。ニュースで殺人者の顔を見た時、黒い靄がかかったのが原因である。

以下略



3: ◆XTaiiNXKpw[sage saga]
2014/05/08(木) 01:09:08.56 ID:5ztHGExv0
 こういう経験から少年はいくつかのことを理解した。

1:なにかは人が絶滅してもいいくらいには失望している。だけど、人全体の改心を望んでもいる。
2:そのため、人の自滅行為に対しては寛容。ただし命を奪う行為は許さない。
3:この判断は実時間で行われる。つまり、過去に許されない行為を行っても改心さえすれば靄は消える。
以下略



4: ◆XTaiiNXKpw[sage saga]
2014/05/08(木) 01:11:04.83 ID:5ztHGExv0
 形としては高校の美術教師のサポートという名目のアルバイト。ただ、少年の毎日の仕事はほとんどなく美術室の準備室に200号のキャンパスを置かれ「とりあえず、描いてみようか」そう美術教師に言われた。

 少年は去年の十月、あの時から一度も筆を取っていない。どの色をどこに置くかを常に自分に問い続けてきた少年にとってそれの答えがわかってしまうことは、究極的な終了で、芸術は自分自身と同じくらいに無関心なものとなった。

 その結果、少年は校舎の三階のベランダから隣接した体育館の屋上で人を見ないよう空を見続ける日々を送っていた。
以下略



5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/05/08(木) 01:14:15.65 ID:gUQ4KT+a0
イタズラにしては酷いなオイ…


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