過去ログ - 教師「お前は一体どうしたいんだ!」 少女「私は……」
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144:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/01(水) 00:59:23.94 ID:pQGk8Z2w0
応接室と生徒指導室は割合近い。移動にはほんの数分もかからなかったが、教師にとっては永劫に続くかに思うほど遠かった。
あるいは、それは教師の願望だったのかもしれない。生徒指導室まで永久に辿り着くことがなければ、教師は自分の直面した現実と向き合わなくて済む。

しかし悲しいかな、教師の足は止まることを知らず、着実に距離を刻んでいた。
行く手に見えた「生徒指導室」のプレート。予想だにしないものを見つけた気がして教師の足が凍りついた。
ややあってから、そこが自分の目的地だと思い出した。自分自身に自分の愚かしさを突き付けられているようだった。そんな自分が、たまらなくおかしい。

教師(私はこんなにも己の矮小さに無自覚だ……)

その帰結がこのざまだった。敗北感に打ちのめされながら引き戸の前に立ち、戸をノックする。中から澄んだ応答が聞こえて、教師は力なく戸を引いた。

生徒指導室には少女しかいなかった。教師は自分が指示せずとも、誰か監督の人員が寄越されるものと一人合点していたが、監督者の姿がない。不審げにする教師に、少女が座ったまま答えてくれた。
少女の言によれば、事務員はわざわざ数人がかりで荷物を持ってくると、全員すぐにどこかに行ってしまったらしい。

そうか、と応えながらも釈然としない気持ちが残ったが、むしろ好都合だと考え直した。余計な横槍を入れられなくていい。

生徒指導室は中央で五つの机が向かい合わせにされていて、あとの机はまばらに並べられている。少女は入口に近い、前から二番目の一つを使っていた。
教師は少女の前の席に腰掛けた。椅子の前後を反転させて少女と机一つを隔てて向かい合う。

少女の瞳の色は深かった。底を見通せないその瞳は、吸い込むように見る者を囚える。その奥底に潜む――何かが潜んでいると錯覚させる妖しさがあった。

教師は少女の視線を受け止めることができなかった。教師が微妙に目を逸らしたのを訝しんだのか、少女が小さく首を傾げたのが分かった。
教師は少女の様子に気が付かないふりをして、面談の顛末を説明した。



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