13: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:06:22.13 ID:jYhc2yQnO
土御門はややあって、ようやく口火を切った。
「……オレはこの世界の人間じゃない」
「……は?」
14: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:07:14.51 ID:jYhc2yQnO
蓮太郎は「何言ってんだコイツ」という目で土御門を見ている。
対する菫は、顎に手を当てて考えるようなポーズを取っていた。
まずいな。
あまりに突拍子のない話すぎたか。
15: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:08:14.70 ID:jYhc2yQnO
背中の傷……雲川芹亜の『処刑』か。
彼はそこで気を失った。
気を失って……。
(……オレは、どうやってこの世界に来たんだ?)
16: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:10:39.38 ID:jYhc2yQnO
「……こっちは面白くないがな」
「まあそう言うな。これも何かの縁、或いは神の悪戯か。
ともかく、君は原因不明の何かによってこの世界に来てしまった。
能力だの魔術だのは知らないが、同じ人間だろう?
17: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:11:31.65 ID:jYhc2yQnO
「自信作だ。食べて見てくれ、蓮太郎くん」
「……先生、マトリックスって映画に出てくる『ゲロッグ』って食い物知ってっか?」
字面からして口にしたくないような名前だった。
18: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:13:10.75 ID:jYhc2yQnO
外に出てよく身体中を調べてみると、拳銃を始めとした手荷物は取り上げられていなかった。手持ちのものは折紙や拳銃、財布には数千円鎮座していた。
学園都市製の紙幣には内部にICチップが内臓されているが、さて、こちらで使ってもよいのやら。
もしものためにと体の至る所に隠していた約5万円ほどの紙幣も確認したが、最後に記憶にある河の水に塗れてシワクシャになっているわけでもなかった。
外の風景は、やはりというべきか、学園都市のそれではない。
19: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:15:31.21 ID:jYhc2yQnO
というか、これからどうすればよいのだろうか。
全財産は五万円弱。申し訳程度という額で、食費だけで言うなら数ヶ月は食いつなげられる。だが、住む家を用意して、お金を手に入れるために仕事を見つけて、暮らす?
この東京エリアとやらに戸籍はない。
ガストレア云々の話は聞いたが、こちらの世界についての常識はない。
20: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:16:10.10 ID:jYhc2yQnO
一目見て、土御門は硬直した。
巨大ディスプレイの映画で見るような怪物。
3DCG技術で飛び出てきたような化け物。
禍々しい赤々とした瞳、巨大な体躯、異質な姿形。
21: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:16:43.63 ID:jYhc2yQnO
土御門が硬直したのは、何も、その怪物への恐怖だけではない。
その目の前で尻餅をついている、青とも黒ともとれる髪色をした少女の存在が、彼の目線を釘付けにしていた。
なんだか見覚えのある風貌だった。
いや、知りえているはずはない。間違いなく初対面だが、その少女はどこか、彼が最も守るべき少女と似ているような気がしたのだ。
22: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:17:24.36 ID:jYhc2yQnO
蜘蛛のような体躯をしたガストレアの前脚の一つが、鎌のようになって少女へと襲い掛かった。
鎌がその首を切り落とす前に、土御門は片手で少女を抱えて前転し受身をとる。
標的が、彼へと変わる。
23: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:18:35.47 ID:jYhc2yQnO
土御門は戦慄していた。
遺伝子の書き換えによって、ヒトはガストレア化する。
ということは、目の前にいる怪物も、元々はどこかで暮らしていた人間なのだ。子供か大人か老人かはわからない。だけど、確実な、人類の敵。
少女を地面に降ろし、離れていろと忠告する。少女はとてとてと走っていき、十数メートルほど離れた地点の電信柱の裏側に隠れた。
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