1:VIPにかわりましてNIP初心者がお送りします[saga]
2014/07/27(日) 19:36:06.46 ID:IIy9Ia5F0
七月十八日(金) 天気:晴れ
穏乃「いやっほーぅ、夏休みだぁーっ!」
憧「こらシズ、そんなにはしゃいでたら怪我するわよ」ハァ
玄「二人とも仲がいいね〜」
宥「あったか〜い」
灼「玄は宿題わすれそうで心配…」
玄「それほどでもっ」
灼「褒めてな…」ハァ
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2014/07/27(日) 19:37:00.78 ID:IIy9Ia5F0
穏乃「あ、そうです玄さん。これからちょっと山に行きません?」
玄「むむ?突然どうしたの?」
穏乃「久しぶりに山の『小屋』に行ってみたくなって!」
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2014/07/27(日) 19:38:33.11 ID:IIy9Ia5F0
灼「私はこれから店の装飾があるから遠慮す…」
宥「わ、私も寒そうだから遠慮するね」
憧「相変わらず宥ねえは寒がりだね〜」アハハ
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2014/07/27(日) 19:42:30.44 ID:IIy9Ia5F0
『小屋』。
昔――といってもこども麻雀クラブにいたころだから4・5年前だけど、私はよく穏乃ちゃん、憧ちゃんと一緒に学校横の山で遊んでいた。
山を一1・2キロ程登ったところに、すこし平らに均された広場のような場所がある。
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2014/07/27(日) 19:47:24.70 ID:IIy9Ia5F0
一日中遊び呆けて、疲れて、夜になって。
誰となく広場に寝転がり、三人で頭を中心に放射状に寝そべって。
深い藍色の中、鈍く光る星を数え、下らないことで笑みを溢して。
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2014/07/27(日) 19:48:05.93 ID:IIy9Ia5F0
……次の日、三人とも穏乃ちゃんの家に集められて、一堂に会した親たちにこっ酷く怒られたっけ。
「子供だけで野外に泊まって、クマにでもあったらどうするんだ」って。あのときのお父さんはとっても怖かった。
そんな『小屋』だけど、こども麻雀クラブが無くなって、憧ちゃんはもちろん、穏乃ちゃんともあんまり関わらなくなってからは一度も行っていなかった。
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2014/07/27(日) 19:49:36.80 ID:IIy9Ia5F0
穏乃「玄さん!憧!速く速く!」ヒョイヒョイ
憧「はぁ…はぁ…シズ、ちょっと…速すぎ…」ゼーハー
玄「ハァ…ハァ…あうっ」コケ
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2014/07/27(日) 19:50:16.20 ID:IIy9Ia5F0
穏乃「…わかりました!憧、行くよ!」ダッ
憧「う、うん」ダッ
私は軽くしゃがみ、運動靴の紐を一旦解いて、結びなおした。
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2014/07/27(日) 19:52:19.52 ID:02CWi3wkO
山を1、2キロって大雑把に言っちゃうクロチャーは既にシズに毒されちゃってるのか
10:VIPにかわりましてNIP初心者がお送りします[saga]
2014/07/27(日) 19:52:58.76 ID:IIy9Ia5F0
冷たい風に吹かれて木々が揺れる。
まだ見覚えがある。
そう、確か、ここ。ここに大きな檜が立っていたはず。
11:VIPにかわりましてNIP初心者がお送りします[saga]
2014/07/27(日) 19:56:19.92 ID:IIy9Ia5F0
玄「うう……」
迷ってしまった。
私の記憶力は思ったよりも高くなかったようだ。
12:VIPにかわりましてNIP初心者がお送りします[saga]
2014/07/27(日) 19:56:59.45 ID:IIy9Ia5F0
そう考えると気が楽になってきた。穏乃ちゃんたちを心配させてしまうのは少し気にかかるけど、まぁきっと大丈夫。
山頂まではまだそこそこあるだろうけど、それほどきついわけでは無いだろう。
雑草の中を歩き、茂みを掻き分け、時に転びながら私は進んだ。
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2014/07/27(日) 19:58:23.41 ID:IIy9Ia5F0
獣道、という程荒くはなく、しかし整備されているとも思い難い、何とも言えない道。
既に迷っている私に怖いものは無かった。その不思議な道へと一歩、踏み出す。
道を進むにつれて、見覚えのない風景へと変わっていく。こんな場所があったのか、と心の中で感嘆した。
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2014/07/27(日) 20:13:41.70 ID:h2ScRIcL0
見ているぞ!!
15:VIPにかわりましてNIP初心者がお送りします[saga]
2014/07/27(日) 20:23:36.55 ID:IIy9Ia5F0
何やら妖しい雰囲気を醸し出すその岩穴に、自然と足が吸い込まれていく。
私はしゃがみ、体勢を低くし、少しずつ前へ踏み出していく。
一歩、また一歩。
16:VIPにかわりましてNIP初心者がお送りします[saga]
2014/07/27(日) 20:24:24.38 ID:IIy9Ia5F0
恐怖が勝った。私は引き返そうと、体を捩った。
玄(ん?)
右端の壁に顔が当たった時、その先の微かな光を見つけた。それは、出口がすぐそこにあることを意味していた。
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2014/07/27(日) 20:25:20.91 ID:IIy9Ia5F0
鳥の囀り。ざわめく木々。
僅か十数メートルの距離だったにも拘らず、まるで全く別のところに来たような感覚を覚えた。
玄「なんだかすごく苦しい感じがするや…ん?」
18:VIPにかわりましてNIP初心者がお送りします[saga]
2014/07/27(日) 20:45:04.29 ID:IIy9Ia5F0
そっと拾い、先ほどの黄色い花と共に手に握る。
私は周囲を見渡した。
玄(……何かが変)
19:VIPにかわりましてNIP初心者がお送りします[saga]
2014/07/27(日) 21:18:41.11 ID:IIy9Ia5F0
の手から、自然と石が滑り落ちた。
いけない。私は垂直に腰を落とし、石を拾おうとした。
――――わかった。
20:VIPにかわりましてNIP初心者がお送りします[saga]
2014/07/27(日) 21:19:12.67 ID:IIy9Ia5F0
石はほぼ球体であった。そしてここは『山の上』のはず。
ここが山なら、落ちた石は追って拾わねばならないはず。
なぜって、ここが山なら、今私が立っているここは斜面でなければならないから。
21:VIPにかわりましてNIP初心者がお送りします[saga]
2014/07/27(日) 21:20:03.45 ID:IIy9Ia5F0
私の体を寒気が走り抜けた。
―――ここは、さっきまで私がいた山じゃない。
別の、どこか。
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